女性の早期離職要因、日本の「第2のガラスの天井」とは 

記事のポイント


  1. BSIグループは、女性の早期離職要因などをまとめたレポートを公表した
  2. コロナ禍を経て、退職せざるを得ない状況に直面する女性は増えている
  3. こうした状態を「第2のガラスの天井」と名付け、解決策を提唱した

BSIグループジャパン(横浜市)はこのほど、女性が早期に離職する要因や解決策をまとめたレポートを公表した。コロナ禍を経て、労働慣行が大きく変わった中では、退職せざるを得ない状況に直面する女性が増えている。同社はこの状態を「第2のガラスの天井」と名付けた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

BSIは、本人の希望ではなく、「キャリアをストップせざるを得ない」と感じ退職を選択している状態を、第2のガラスの天井と名付けた

BSIは、世界初の国家規格協会だ。ISOの設立メンバーとして規格策定に携わる。BSIグループジャパンは、1999年に設立したBSIの日本法人だ。

今回のレポートは、二つの調査結果をもとにまとめた。米国、アフリカ、アジア、オセアニアの4大陸5000人を対象にした調査と英国、米国、オーストラリア、中国、日本の18歳以上の女性5074人を対象にした調査だ。

更年期障害や不妊・流産への理解求める

グローバル調査の結果、「第2のガラスの天井」としてまとめた課題は下記の通りだ。

・73%が、若い女性社員の育成には豊富な知識や経験を持つ女性の指導役(メンター)が有効だと回答したが、42%は年上の女性が管理職に就くことは依然としてまれであり、同じく42%がそのようなメンターから学ぶ機会がなかったと答えた。

・76%がもっと働き方の柔軟性を高めるべきだと答えた。72%が更年期障害を経験した女性を組織が支援することを望んでおり、特に5分の1はその欠如が仕事を継続する上での障壁になっていると答えた。

・69%が不妊、または流産に関する公式な方針があると助かると答えたが、そのような方針があることを知っていると答えたのはわずか7%に過ぎず、5人中3人が、雇用主にこの問題を相談することに抵抗があると答えた。

レポートでは、こうした課題を解消するため、6つの取り組みを推奨した。

1. 「第2のガラスの天井」を解消するメリットを認識すること
課題と捉えるのではなく、成長とイノベーションを促進し、持続可能な世界に向けた進歩を加速する機会として取り組むこと。
2. 対話すること
女性が何を望んでいるかを尋ね、現在のトレンドを逆転させ、より多くの女性が仕事を通じて目標達成に取り組めるような解決策を見出すこと。
3. 更年期障害に限らず、さまざまな要配慮事項に関して利用しやすいサポートを提供すること
4. 柔軟性を資産として捉え、必要に応じて微調整を行うことで快適な職場作りができると知ること
5. 労わりの文化を醸成すること
個人のニーズに積極的に応えることで人々に重きをおく。
6. ベストプラクティスを共有すること
組織、業界、国を越えたコラボレーションが進歩を牽引する。

日本の課題は、「就業環境の遅れ」と「女性の管理職登用の低さ」

レポートでは、グローバル調査をもとに、第2のガラスの天井を解消する解決策をまとめた。一方、ジェンダー後進国の日本特有の「第2のガラスの天井」もある。BSIグループジャパンの漆原将樹社長は、日本の「第2のガラスの天井」ついて、女性が長く働き続けるための「就業環境の整備の拡充」と、「女性の管理職登用の低さ」を挙げた。

「レポートでは、調査対象となった日本女性の中で、自分たちの世代は『男性同僚と同じくらい長く働き続けるための柔軟性とサポートを受けられる』と前向きに捉えているのは半数以下(44%)でした。この数字は調査対象となった5カ国の中で最低で、5カ国の平均は59%です」

「4割強(42%)が、『女性が管理職に就くことは珍しい』と答えており、こちらは5カ国の平均と同等です。

日本の『第2のガラスの天井』は、これらの就業環境の整備の遅れや不十分なサポート体制、また管理職登用の低さによるものが大きいと考えられます」

漆原社長は、日本の第2のガラスの天井の傾向で軽視できないこととして、ジェンダーギャップを挙げた。2023年に世界経済フォーラムが発表した「The Global Gender Gap Report 2023」では、日本のジェンダーギャップの順位は146カ国中125位だった。

第一のガラスの天井は、キャリアパスを拒む「見えざる障害」という意味で使用されてきた。第2のガラスの天井はそれを打破してもなお、長く働き続けることが困難な就業環境、性差の理解や配慮の不足が明らかになったものと言える。

「今回のレポートでは、女性の4分の3近くが、女性が年齢を重ねても働き続けることで経済成長に貢献できると指摘しました。世界的にも生産性の向上が優先事項である今、女性が働き続けるための支援を確保することは、変革をもたらす可能性を秘めています。女性がキャリアを前進させ続けることは、組織の成長とイノベーションを促進し、最終的に個人、組織、社会全体に利益へとつながり、持続可能な世界への進歩を加速させる機会となります」(漆原社長)

■「第2のガラスの天井の解消に向けて」レポートの日本語版はこちら

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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