世界の自動車15社気候変動対策ランキング、首位はベンツ

記事のポイント


  1. グリーンピース・ジャパンは、世界の自動車大手15社の気候変動対策ランキングを発表した
  2. パリ協定の1.5℃の目標と整合性のある脱炭素に取り組んでいるかを評価する
  3. ベンツ、BMW、SAIC(上海汽車集団)がベスト3、日本はホンダが最高で10位に

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは10月19日、「自動車環境ガイド2023」を発表した。世界自動車大手15社の気候変動対策を内燃機関車の段階的廃止、サプライチェーンの脱炭素化など3項目で評価。メルセデス・ベンツ、BMW、SAICがベスト3、日本はホンダ10位、日産11位、トヨタ13位、スズキ15位だった。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

グリーンピース・ジャパンは日本の自動車メーカーに「反EVロビー」をやめることや、材料調達や製造過程の包括的な見直しを求めた

評価は、各社の公開情報を基に気候変動対策を、1)ICE(内燃機関)車の段階的廃止(評価構成比77%)、2)サプライチェーンの脱炭素化(同18%)、3)資源の節約と効率化(同5%)のスコアを算出し、ICE車両廃止の先延ばしや反EVロビーなどネガティブな要素を減点する方式だ。

評価構成比の、77%、18%、5%は、内燃機関車のライフサイクルにおける排出量の割合を示している。排出量は、走行時77%、製造時18%、廃棄・リサイクル段階5%とされている。

今年3回目となる「自動車環境ガイド2023」の日本企業の結果は次の通りである。

  1. 販売台数に占めるEV割合が日産以外は1%以下であり絶対的に低い。
  2. EVへの本格的シフトを表明している会社(ホンダ、日産)と表明せず全方位戦略を追求する会社(トヨタ、スズキ)に二分されている。日産は9月末、欧州市場における2030年までの100%EV移行を発表した。
  3. 製造過程における再エネ使用、サプライチェーンの脱炭素について目標設定が曖昧であるケースが多い。
  4. 重要な材料である鉄鋼の脱炭素について、欧米のメーカーと格差がある。

グリーンピース・ジャパンは、日本の自動車会社へ4つの提言を行った。

①ICE車両廃止の先延ばしや反EVロビーをやめ、世界の潮流を直視すべき。欧米では電池製造を再生エネルギーで行い、ライフサイクルで見ても電気自動車の二酸化炭素排出量は大幅に減る傾向にある。

②気候危機への責任を認識し、ガソリン車をEVに変えることだけでなく、材料調達や製造過程を包括的に見直し、モビリティ・サービス提供者へ生まれ変わる必要がある。再生エネルギーの使用率目標、鉄鋼の脱炭素に関する目標など明確な数値目標と達成年を設定して説明責任を果たしていくべきである。

③脱炭素の規制や法制度を踏まえ、日本国内外の消費者に信頼されるものを提供する可能性を追求すべきである。G7諸国にならい、新車販売台数に占めるEVの割合を設定するべきである。

④今後、欧州、中国、米国といった自動車の主要市場で内燃機関車の需要減が見込まれる中、インド、タイ、インドネシアなどのアジアの国々でも環境対応と産業新興の観点から自国内でのEV生産や、テスラなどEV企業の誘致に乗り出しており、日本政府や日本のメーカーの姿勢、対応とは対照的であると言える。自動車会社はEVシフトとモビリティ・サービスへの移行といった真の意味でのクリーンな戦略を打ち出すべきである。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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