富士フイルム、DXを活用した働き方改革で脱炭素を推進へ

記事のポイント


  1. 富士フイルムBIが新オフィスで炭素中立を実現する
  2. 拠点統合効果でCO2排出量の8割を削減し、残りは再エネを活用する
  3. DXによる自動化・電子化が、脱炭素と働き方改革の両方を後押しした

富士フイルムビジネスイノベーション(BI、旧富士ゼロックス)は、新拠点を東京・西新宿に開設した。近隣に点在するグループ会社8社7拠点の拠点統合効果でCO2排出量を約80%削減し、残る2割は再エネを活用して炭素中立を実現する。DXによる業務プロセスの電子化・自動化が、脱炭素と働き方改革の両取り組みを後押しした。(オルタナ編集部・北村佳代子)

富士フイルムビジネスイノベーションの友納睦樹執行役員

「脱炭素への取り組みは人類としての責務だ」

富士フイルムBIの友納睦樹執行役員は10月25日、記者向け説明会の冒頭で脱炭素へ向けた思いを語った。

「脱炭素は早く実現しなければ人類の将来はないと私自身は強く思う。当社の取り組みだけでなく、業界や社会などすべてが協力し合って達成しなければならない」(友納執行役員)

富士フイルムグループは「2040年度のCO2排出ゼロ(Scope 1と2)」目標を掲げる。富士フイルムグループとしては、炭素中立を実現する国内オフィスは、デザイン・IT開発拠点のフジフイルム・クリエイティブ・ビレッジに続く2拠点目となる。

富士フイルムBIはグループの中で、複合機などのオフィス関連やビジネスソリューションを提供する。2021年に富士ゼロックスから社名変更した。2022年度の同社売上高は、富士フイルムグループ全体の約3割を占める。

■自動化と電子化がオフィスの脱炭素化を後押し

同社はこれまでも、生産・営業・保守サービスなど、国内外の事業所の特性に応じて、省エネ・創エネを進め、脱炭素化を図ってきた。

今回、国内オフィス拠点として炭素中立を達成できた要因を、「省エネ」「創エネ」「再エネ活用」の3ステップだと解説した。

友納執行役員は、「拠点集約前に各社がDXを通じて進めた業務プロセスの自動化・電子化があってこその達成」だと強調する。

例えば、「人」と「紙」が中心だった事務プロセスを電子化・自動化することで、情報伝達のリードタイム短縮に加え、紙の出力・輸送にかかる排出量を削減した。

紙の出力枚数は年間970万枚と約9割削減し、それに伴い、保管スペースの3段キャビネットも年間26本(21㎡相当)減少した。その結果、約2100名が入居する新拠点の専有面積は、集約前から約27%縮小した。

オフィス内の席はフリーアドレス制だ

■オフィス設計にも働き方改革へのこだわりが

電子化・自動化が進んだことで、新拠点のオフィス設計には、社員の生産性向上に資する「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」手法を取り入れた。

「ABW」は、ワーカー自らがアクティビティに応じて、最適な時間、場所、相手を選択できる働き方だ。オランダのヴェルデホーエン氏が提唱した。労働生産性の向上に加え、コラボレーションの活性化、ワーカーのウェルビーイングなどの点でも注目が高まる。

新拠点では、個人とチームの生産性を高める「ABW」を通じて、働き方改革をさらに促進する。

「働きがいにつながる環境づくり」は、「気候変動への対応」と同様に、富士フイルムグループのCSR長期計画「サステナブル・バリュー・プラン2030」で掲げた重点課題だ。

「日本の場合はチームワークが大事だ。オフィスの設えで出社時のコミュニケーションを刺激し、チームワークの発揮につなげる」(友納執行役員)

コミュニケーション活性化を企図した「ファミレス風」テーブルも窓際に
北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #脱炭素

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