コーポレートガバナンス改革の「実質化」に向けて

記事のポイント


  1. コーポレートガバナンス・コード導入から8年、改革の実質化が課題だ
  2. 2023年に入り、東証や金融庁が企業への対応強化を求める動きが鮮明に
  3. 無形資産を経済価値に転換するための価値創造プロセスの確立が重要

今や「サステナビリティを意識した経営」が重要であることは論を俟ちません。しかし、サステナビリティに対する企業の捉え方にはバラツキがあり、投資家との認識のギャップも存在します。企業は、競争優位の源泉となる無形資産を経済価値に転換するためのメカニズム(価値創造プロセス)を確立し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指すことが求められています。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

コーポレートガバナンス改革を巡る動き

企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的とする「コーポレートガバナンス改革」の契機となった日本再興戦略(-JAPAN is BACK-)から10年、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)導入から8年が経過しました。

本コードは2015年の導入後、18年、21年と2度の改訂を経ました。2024年は3度目の改訂が予定される年ですが、今のところその動きは見られません。

金融庁が4月に公表した「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」によると、コードの改訂時期については「必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、その進捗状況を踏まえて適時に検討することが適切である」としています。

コーポレートガバナンス改革については、従前より「形式」(独立社外取締役の人数などの形式的な体制整備)から「実質」(企業価値向上)への深化が課題となっていました。2023年に入り、企業にその対応を求める動きが鮮明になってきました。

3月には東京証券取引所から「資本コストや株価を意識した経営に向けた対応」の要請がなされました。プライム市場・スタンダード市場の全上場企業は、PBR(株価純資産倍率)1倍超えを目安とする企業価値向上に向けた取組が求められます。

これに呼応する形で、金融庁はそのアクション・プログラムで、①収益性と成長性を意識した経営、②サステナビリティを意識した経営、③独立社外取締役の機能発揮などを企業に要請しました。これは、上場企業のコーポレートガバナンス改革を仕切り直すための施策をまとめた政府の行動計画と言うことが出来ます。

企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、足元では①に堅実に取り組みつつ、中長期を見据えて②にも積極的に取り組むことが重要です。そのための取締役会の機能強化が③です。

サステナに対する捉え方、企業と投資家でギャップ
■経済価値と社会価値のトレードオン
コーポレートガバナンス改革の実質化とは

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #サステナビリティ

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