「森林&人権ランキング」ユニリーバが首位、最下位はP&G

記事のポイント


  1. 環境NGOが「森林&人権方針ランキング2023」を発表した
  2. 大手消費財企業10社を対象に、調査・分析を行った
  3. その結果、ユニリーバが「C」評価で最も高く、P&Gが最下位だった

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、本部:米サンフランシスコ)は11月17日、「森林&人権方針ランキング2023」を発表した。熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品にかかわる大手消費財企業10社を対象に、調査・分析を行った。その結果、ユニリーバが「C」評価で最も高く、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が最下位だった。(オルタナ副編集長=長濱慎)

「森林&人権方針ランキング2023」
「森林&人権方針ランキング2023」。報告書はRANのサイトからダウンロードできる

サプライチェーンを通してパーム油、木材、カカオなどの原材料を調達する消費財企業は、森林破壊や人権侵害の防止に重要な役割を果たす。RANはその責任を明確にするため、代表的な10社を対象に2021年からランキングを行ってきた。

NDPE(森林減少・泥炭地開発・住民搾取の禁止)方針の実施状況、先住民や地域コミュニティの権利尊重、サプライチェーンの透明性など12項目・24点満点で評価し、2023年の結果は以下の通りだ。

■リーダー企業(C評価)
ユニリーバ(15点)

■中位企業(D、D-評価)
ネスレ(8点)
ペプシコ(8点)
花王(8点)
コルゲート・パーモリーブ(7点)
マース(6点)

■不可企業
フェレロ(5点)
日清食品(5点)
モンデリーズ(4点)
P&G(3点)

昨年に続きトップのユニリーバは、産品横断的なNDPE方針を設けたこと、先陣を切って人権保護方針と行動計画を発表したことなどが評価された。

「産品横断的なNDPE方針」とは、適応の対象を特定の産品だけでなく森林破壊リスクのある全ての産品に広げることを指す。ユニリーバは、パーム油、大豆、カカオ、茶葉、乳製品などに方針を策定している。

調査対象10社のうち、花王とコルゲート・パーモリーブも産品横断の方針を掲げる。日清食品は調達方針の中でNDPE方針の支持を表明しているものの、サプライヤーへの要求が不十分と指摘された。

最下位のP&Gは産品横断の方針を発表したが、木材パルプのサプライチェーンにおける森林保護が弱体化したという。RANは、同社のトイレットペーパー事業における優位性を考えると影響は深刻だと指摘する。

RANはさらに、NDPE方針を調達先サプライヤー企業のグループ全体に広げるよう働きかけている。サプライヤーがコングロマリット(複合企業)である場合、直接取引する部門が方針に違反していなくても他部門に違反があり、間接的に森林破壊や人権侵害に加担するリスクがあるからだ。

欧州への輸出・販売ができなくなるリスクも

他の重要評価項目である「サプライチェーンの透明性」については、10社とも「0点」という結果に。これは、トレーサビリティを徹底し、森林破壊や人権侵害を撲滅する期限を明示した企業が1社もないことが影響している。

トータルで見てもトップはユニリーバの「C」評価にとどまり、「A」評価(20点以上)を獲得した企業はなかった。

RANの川上豊幸・日本代表は「いずれの企業も公約はしたものの、森林破壊や人権侵害を阻止できていない。約1年後に適応が迫るEUDRの要件を満たす目処も立っておらず、厳しい状況だ」と、危機感を示す。

EUDR(欧州森林破壊防止規制)は、森林破壊リスクのある製品の欧州連合(EU)への輸入・販売を禁止する新たな規制で、消費財企業はサプライチェーン上流まで遡ったデューディリジェンスを義務付けられる。2024年12月から適応が始まる。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #ビジネスと人権

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