記事のポイント
- 規制も罰則もない「キャップなしトレード」型の排出量取引が日本で始まった
- 排出量取引は、取引価格を公示することで多排出企業に脱炭素化を促す施策だ
- 総量規制がない日本独自のやり方を、環境経済学に詳しい専門家はどう見るか
世界的に見ても異質な「キャップなしトレード」型の排出量取引が日本で始まった。排出量取引制度は、取引価格を公示することで多排出企業に脱炭素化を促す施策だ。総量規制がない日本独自のやり方を専門家はどう見るか。(オルタナS編集長・池田 真隆)
「キャップなしだと、超過削減枠を生み出しても、買い手が出てこない。それがこの制度の根本的な矛盾点だ」。環境経済学に詳しい諸富徹・京都大学大学院経済学研究科教授はこう指摘した。
「キャップ」とは、政府が企業に設けた温室効果ガス(GHG)の排出枠を指す。排出量取引では、政府が企業に排出枠を設ける。GHG排出量がその排出枠を超えた企業には罰則を課す。一方、排出枠が余った企業は、排出枠を超過した企業にその分を売ることができる。経済的なインセンティブを与えながら、企業の削減努力を促す施策だ。
排出量取引はEUが世界に先駆けて2005年に導入した。発電や鉄鋼など多排出企業に参加を義務付けた。同制度はEU全体の脱炭素化に大きく貢献したことも証明されている。同制度が対象とした産業の2020年の排出削減率は、2005年比で約43%を記録した。対象外の産業の削減率は約16%だった。
日本では2010年に東京都がEUと同じ、「キャップ&トレード」型の排出量取引を導入した。大規模事業者向けに都がキャップを設けた結果、削減目標値を達成し、一定の効果が出ている。
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