EU、「デジタル製品パスポート」の導入で循環型経済を推進

記事のポイント


  1. 欧州議会と欧州理事会は、「エコデザイン指令」の改訂に暫定合意した
  2. 幅広い製品に「デジタル製品パスポート」を導入する
  3. 企業にはリユース・リサイクル・修理のしやすさに関する情報提供を義務付ける

欧州議会と欧州理事会は12月5日、商品の環境配慮設計を義務付ける「エコデザイン指令」の改訂に暫定合意した。EU全域のほぼすべての製品に、リユース・アップデート・リサイクル・修理のしやすさなどを記録した「デジタル製品パスポート」を導入する。発効から2年後には、売れ残った衣服や靴などのアパレル製品の廃棄を禁止する。(オルタナ編集部・北村佳代子)

EUは「デジタル製品パスポート」導入で
サーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進する

これは、2009年に施行された「エコデザイン指令」の大幅な変更だ。新たな規則は、欧州議会と欧州理事会での正式採択後に発効となる。

現行のエコデザイン指令は、家電製品の省エネ化を進めることに主眼を置いていた。

新たな規則では、対象製品を電気・電子機器に加え、鉄鋼・アルミニウム製品、繊維製品、家具、タイヤ、洗剤、塗料、潤滑油、化学薬品など、ほぼすべての製品カテゴリーに拡大する。

そしてサーキュラーエコノミーの視点から、耐久性、リユース・アップブレード・リサイクル・修理のしやすさ、循環性を阻害する物質の使用有無、再生資源の含有量、エネルギー効率性、ライフサイクル全体でのCO2排出量といった情報の提供を企業に求める。

こうした製品の環境サステナビリティに関する情報を、電子的手段で集約して記録する「デジタル製品パスポート」を導入する。

消費者が製品購入時に十分な情報に基づいた選択ができるよう、検索・比較が可能な公式ウェブポータルの設置も検討する。

製品の修理・メンテナンスやリサイクルなど製品のライフサイクル全体を念頭に、消費者だけでなく輸入・販売者、修理・リサイクル業者、公的機関などが必要とする各種情報の書き込みも求めていく。

欧州グリーンディールを担当するマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会副委員長は「この規制によって、EU市場には、エネルギー効率や耐久性がすぐれ、リユースや修理、リサイクルが可能で、再生材で作られた製品がさらに増えるようになる」と声明を出した。

45カ国の独立消費者団体を代表する欧州消費者機構(BEUC)も、「消費者にとっての大きな一歩」と、今回の合意を評価した。

■売れ残った服・靴の廃棄を禁止に

新たなルールの中には、衣料品や履物を含む売れ残った繊維製品の廃棄禁止も盛り込む。この措置は発効から2年後に適用される。なお、中小企業には6年間の適用除外を認める。

廃棄を禁止する「売れ残り製品」のカテゴリー追加も検討する。また、廃棄された売れ残り製品の数量と廃棄理由の報告も義務付ける。

欧州議会のアレッサンドラ・モレッティ報告者は「地球、健康、経済にとって非常に有害な『取って、作って、廃棄する』モデルを終わらせる時だ」と力説する。

「売れ残った繊維製品や靴の廃棄禁止は、ファストファッション製造業者による商品の生産方法の転換にもつながるだろう」

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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