忍び寄る病魔、耐えがたい腰の痛み、遅々として進まない市の復興計画――。それでも少しずつ周囲を動かし、数々の障壁を乗り越えていこうとする老人の挑戦を、この映画は淡々と描いていく。
撮影期間は1年6カ月。最初のロケでは車中泊が10日以上も続いた。東京~岩手往復の走行距離は5万キロに達した。1往復約1000キロなので、50回は通ったことになる。流されれば、また建てればいいという頑固さを見せる佐藤さんは魅力的だった。
「本作では笑いにもこだわりました。想像を絶する悲劇に見舞われても、被災者である東北人は朴訥で土地に根ざしたユーモアを忘れずに生きています。それが人間であり、悲しみの向こうに透けて見える明日への希望だと思うからです」(池谷さん)
今後、北海道、新潟、兵庫、熊本など全国各地で順次上映予定だ。(今一生)
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