記事のポイント
- 欧州議会と欧州理事会が、強制労働品を禁止する規則案に暫定合意した
- 世界で強制労働に従事している人は推定2760万人に上る
- 強制労働リスクの高い国・地域・産業をリストアップし、調査を進める
欧州議会ならびに欧州理事会は3月5日、強制労働によって製造された製品のEU域内での流通や域外への輸出を禁止する新たな規則案に暫定合意した。世界で強制労働に従事している人は推定2760万人(2021年)とされる。新たな規則案では、強制労働のリスクが高い国・地域・産業に関する情報データベースを構築し、調査を進めていくという。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
禁止対象となるのは、EU域内で製造される域内消費用および輸出用製品、そして輸入品など、すべての製品だ。
EU域内に強制労働の疑いがある場合は、加盟国当局が調査を進める。調査の結果、強制労働が一部でも確認された製品は、当局によって強制撤去となり、製品は寄付、リサイクル、または破棄される。また本規則を遵守しない企業は罰金が科される可能性もある。
EU域外の第三国が関与している場合は、より効果的な調査ができるよう、欧州委員会が調査を主導する。
なお、EUにとって戦略的かつ重要な製品の場合は、その企業がサプライチェーンから強制労働を排除するまで差し止めとなり、強制労働を排除できれば再び製品をEU市場に流通させることができる。
また、欧州委員会は、強制労働のリスクに関する情報データベースを構築する。その際、国家主導による強制労働の場合も含め、「高リスク」である特定の地理的地域、特定の産業をリスト化する。
本法案を提案したベルギーのピエール=イヴ・デルマーニュ副首相兼経済・雇用担当大臣は、以下のようにコメントした。
「21世紀になってもなお、奴隷制や強制労働が世界中に存在していることに愕然とする。この恐ろしい犯罪は根絶されなければならない。そのための第一歩が、労働者を搾取する企業のビジネスモデルを断ち切ることだ。EU域内外のどこで製造されたものでも、私たちEUの単一市場に強制労働による製品の居場所はない」
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