記事のポイント
- 「資産運用立国」を掲げ、国を挙げての「貯蓄から投資へ」は結構なことだ
- だが、金融界がやたら大はしゃぎしているのには思わず苦笑してしまう
- 「資産運用立国」は絵に描いた餅になることが目に見えている
新NISAが始まった。国を挙げての「貯蓄から投資へ」は、資産運用立国を目指すとする首相発言もあり、結構なことである。だが、金融界がやたら大はしゃぎしているのには思わず苦笑してしまう。(さわかみホールディングス社長=澤上 篤人)
資産運用ビジネスは投資家顧客の財産づくりをお手伝いするもの。それも、10年はおろか20年30年といった長い時間軸で運用責任を果たしていかなければならない。
当然のことながらその時々のマーケット動向に左右されることなく、再現性の高い投資運用でもって成績を積み上げていくことが求められる。投資家顧客との接点は、時間の経過とともに高まっていく信頼と安心感である。
一方、金融ビジネスは個々の案件を仕上げて一件落着の世界。その時々のビジネスチャンスをものにして、稼いで終わりだ。
いま大騒ぎしている新NISAも、新規の顧客口座獲得の一大チャンスであり、それを如何に手数料稼ぎにつなげていくかだ。彼らは果たしてどこまで投資家顧客のことを考えているのだろうか。
金融ビジネスの感覚でいくと、新NISAも資産運用立国も、このチャンスをいかに手数料収入につなげるかだ。逆に、彼らからすると個人の資産形成をお手伝いするとかは二の次もいいところ。
現に、大手証券はじめ銀行などが子会社としている投信会社は、どこも販売手数料稼ぎにつながるような投信ファンドをこれでもかこれでもかと設定させられてきた。その結果、公募投信ファンドが6千本を超えた。それらの大半が野たれ死に状態に放置されているのだ。
■ファンドの成績は急悪化へ