アジアの広告祭からデジタルとSDGs潮流を読み解く

記事のポイント


  1. アジア最大級の広告祭「アドフェスト」が3月21~23日まで開催された
  2. 今年のテーマは、「Human Intelligence」
  3. 新設されたサステナ部門から広告のトレンドを読み解く

アジア最大級の広告祭、アドフェストが3月21日から23日まで開催された。今年のテーマは「Human Intelligence」である。新設されたSUSTAINABLE LOTUS部門の注目作から、SDGsコミュニケーションの今後を考察していこう。(伊藤恵=サステナビリティ・プランナー)

検索に潜む「アンコンシャス・バイアス」

女子サッカーのクリスティン・シンクレアは、クリスティアーノ・ロナウドよりも多くの国際試合で得点を挙げている。しかし、国際試合で最も多く得点を挙げたサッカー選手を検索すると、クリスティアーノ・ロナウドが表示されてしまう。

このように、多くの女性アスリートが男性を上回る成績を収めているにもかかわらず、人々の無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)によって、事実と異なる検索結果が示されてしまう。

この課題に挑んだのが「CORRECT THE INTERNET」である。偏りがある検索結果が表示される場合、正しい情報が確認できる仕組みになっている。

さらに、情報の間違いをクリックで簡単に報告もできるようになっている。偏った情報に介入し、女性アスリートの実績が適切に評価されるよう正しく修正する手助けをするこの取り組みは、SUSTAINABLE LOTUS部門でゴールドを受賞した。

超高齢化が進む日本のソリューション

「GAMMA WAVE SOUND」は、超高齢社会が直面する認知症という問題に音の力で挑む革新的なプロジェクトである。認知症患者の脳波活動の低下は広く報告されており、その関係性には注目が集まっている。

塩野義製薬とピクシーダストテクノロジーズの取り組みでは、この脳波(ガンマ波)を活性化させることを目指している。

日常的なテレビの音声などをガンマ波サウンドに変換する技術により、自宅にいながらにして認知機能ケアが可能となるなど、生活のあらゆるシーンに溶け込ませることで、認知症対策がより広がる社会の可能性を提示した。

この未来指向的な取り組みは、SUSTAINABLE LOTUS部門でブロンズを受賞している。

日本の伝統と最新科学で健康をサポート

「AIZOME ULTRA™」は、伝統的な藍染めと最新の科学を組み合わせた画期的な技術だ。天然由来の染料のみを使用し、敏感肌の人々にも安心して使えるテキスタイル製品を開発。さらに、超音波を使用した染色工程で、細胞レベルでの藍成分の結合を可能にし、色落ちや薬効成分の流出を抑えることに成功した。

この技術により、健康と環境に優しいテキスタイル製品が実現され、サステナビリティとウェルビーイングへの新たな道筋を示した。業界内外からの高い評価を受け、アドフェストでもSUSTAINABLE LOTUS部門でブロンズを受賞した。

今回取り上げた受賞作品は、SDGs達成に向けたコミュニケーションにおいて、テクノロジーの重要性を浮き彫りにし、クリエイティブなアイデアが人々と地球にポジティブな影響をもたらせることを示している。持続可能な未来のためにも、革新的な技術とアイデアがこれからも求められていくだろう。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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