1)経営者はサプライチェーンを洗い直し、自分で把握すること
2)BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プランニング)と同様に、供給源をしっかり把握すること
3)従業員教育に投資すること
これら3点は、今まで行われてこなかった歴史の裏返しだ。事業継続、顧客満足、社会的責任が経営の神髄、経営者の義務であるとするならば、社長がサプライチェーンを軽視すると企業がつぶれ、従業員が路頭に迷うことを再考してほしい。
仕入れ調達の基本はQCD(Quality-Cost-Delivery)だ。食材などの原材料を仕入れる時は品質が第一で、納期も第一、そしてコストは第二である。全てが第一であるべきだが順序を付けるとすれば品質を強調したい。
それは最終的に顧客に大きく影響するからだ。同ホテルは前述したように全社員が最終顧客に向いていないことが判明した。どうせ分からないだろう、という意識は脅威であり、また驚異でもある。
■CPOがいない日本企業
同じホテルチェーンでも、外資のヒルトン、マリオットなどには、れっきとしたCPO(最高購買責任者)が存在する。
数年前、世界最高峰の購買調達の学会であるInstitute for Supply Management (ISM)の会長は、ヒルトン・ワールドワイド専務執行役員兼CPOのA S. ニーブス氏だった。
彼は世界中のヒルトンホテルの食材と飲料の仕入れを監視するため世界中を飛び回っており、文字通りグローバルソーシングを実践している。
ヒルトンは現在、90カ国以上で4,000軒以上のホテルを運営しているコングロマリットであるが、ブランド維持には毎年相当な額の投資をしている。
そして、その筆頭の位置にあるのが同氏でありサプライチェーン部門である。即ち同社ではサプライチェーン経営が適切に実践されておりヒルトンという世界に冠たるブランドが維持されている。この点は日系企業も見習うべきであろう。
■ブランドを大切にする仕入れ担当
このCPOという職位は、日本企業に多くあるところの「購買調達管掌役員」と大きく異なる。
つまり、CPOは購買サプライチェーンのプロであり、且つ経営者であることだ。顧客満足に配慮できる仕入れ責任者であるため入ってくる原料の品質に最大の責任を持つ。原価意識を越えて企業イメージやブランドを大切にする仕入れ担当でもある。