アジアの温暖化は世界平均より早い: 世界気象機関の報告書

記事のポイント


  1. 世界気象機関(WMO)が「2023年アジア気候情勢報告書」を公表した
  2. アジアは、温暖化が世界平均より速く進み、最も気象災害が起きやすい
  3. 2023年は洪水・暴風雨関連の災害が最も多く、海面水温の温暖化も加速した

世界気象機関(WMO)は4月23日、「2023年アジア気候情勢報告書」を公表した。それによると、アジアは世界平均より速いスピードで温暖化が進行しており、世界で最も気象災害が起きやすい。2023年は洪水・暴風雨に関連した災害が最多となったが、猛暑も深刻だ。黒潮暖流をはじめ、海面水温の温暖化も加速した。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

2023年のアジアの地表温度(1991年-2020年の30年間との比較)
(c) World Meteorological Organization

報告書によると、アジアは2023 年も引き続き、世界で最も気候関連、異常気象、水関連災害に起因する災害に見舞われた地域となった。洪水と暴風雨による死傷者数ならびに経済損失額は世界で最も高く、熱波も深刻だ。

■記録的に暖かかった日本とカザフスタン

2023年のアジアの地表温度は観測史上2番目に高く、1991年から2020年の30年間の平均を0.91度上回った。1961年から1990年の30年間平均との比較では、1.87度高くなっており、長期的な温暖化傾向がほぼ2倍に高まった。

なかでも2023年は、西シベリアから中央アジア、中国東部から日本にかけて、高い平均気温が記録されており、日本とカザフスタンは記録的に暖かい1年になった。

日本は観測史上最も暑い夏を経験したが、中国でも夏には高温事象が14回発生した。中国の国家気象観測所の約70%が40℃を超え、16の観測所で最高気温記録を更新した。


■水文気象災害への脆弱さが浮き彫りに

2023 年にアジアで、水文気象災害に関連する災害は計 79 件報告された。このうち 80% 以上が洪水や暴風雨に関連したもので、死者数は2000 人以上に上り、900 万人が直接的な影響を受けた。

特にインド、イエメン、パキスタンでは、洪水による死者が自然災害の中で最も多く、アジアは洪水などの水文気象災害に対して非常に脆弱であることが浮き彫りになった。

一方、熱波による健康リスクも増大した。しかし熱波に関連した死亡率はほとんど報告されていないという。


■日本近海の海面水温は世界の平均より高い

また、海面水温と海洋熱が過去最高になったことも明らかになった。

日本近海の黒潮暖流をはじめ、アラビア海や北極海の一部(バレンツ海南部、カラ海南部、ラプテフ海南東部)の海面は、特に温暖化が激しくなった。世界の平均海面水温よりも高く、3倍以上の速さで温暖化が進んでいるという。

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #気候変動

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