動物実験廃止のラッシュ プライズ、米研究者などが受賞

記事のポイント


  1. ラッシュなどはこのほど「Lush Prize 24」の受賞者を発表した
  2. 「Lush Prize」は動物実験廃止を訴え、世界の優れた代替方法を表彰する
  3. これまでに35カ国126のプロジェクトに300万ドル以上を授与した

英コスメのラッシュや消費者団体「エシカルコンシューマー」はこのほど、「Lush Prize 2024」の受賞者を発表した。「Lush Prize」は動物実験の代替法開発や動物実験廃止に向けた活動を推進する世界最大の基金だ。これまでに35カ国126のプロジェクトに対して300万ドル(約4億6500万円)以上を授与した。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

動物実験の代替手法となる肝臓チップが「サイエンス部門」で受賞
動物実験の代替手法となる肝臓チップが「サイエンス部門」で受賞

「Lush Prize」は2012年に設立した基金だ。日本を含む世界中の研修者と団体を支援する。賞には「世論喚起部門」「サイエンス部門」「トレーニング部門」「ロビー活動部門」「若手研究者部門」の5分野がある。24年からは賞金の授与を伴わない「主な科学協力部門」や「政治的功績部門」の表彰も始めた。

24年の「サイエンス部門」の受賞者には、米ボストンを拠点とする臓器チップ企業・エミュレート社のローナ・イワート博士が選ばれた。

人体に有害な化学物質を発見するための動物実験は不成功に終わることが多く、実験に合格した医薬品でも90%は市場に出回らない。そのためヒト細胞の培養を手掛ける企業が増えるが、各国の規制当局は優位性を示す証拠が不十分として、動物実験が継続されている。

エミュレート社は22年に同社の肝臓チップの有意性を証明する研究を発表。27の化学物質のそれぞれに800個以上のチップを使ってテストした。この化学物質のなかには、動物実験を合格したにもかかわらず、肝障害で240人以上の死者を出した経緯を持つものも含まれる。

研究のなかでは、同社の肝臓チップが採用されることによって、業界全体で30億ドルの生産性向上も示唆。公衆衛生研究学の論文誌「Nature Communications Medicine」の同じ出版年代の論文の上位1%にランクインした。

こうした成果が評価され、今回の「サイエンス部門」での表彰となった。Lush Prizeディレクターのロブ・ハリソン氏は「動物実験ではない新しい手法の有意性を示そうと試みる学者や企業にとって、新たなベンチマークとなるものだ」と指摘する。

「Lush Prize 2024」はほかに、スイス、英国、中国、ブラジル、イタリア、カナダなどの団体・個人などを表彰した。

萩原哲郎

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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