都市の空き家、グリーンリノベーションで生き返らせる

■小林光のエコめがね(41)■

3年前の2021年は、私にとって、書籍出版の豊穣年であった。「エコなお家が横につながる」、「グリーン・ビジネス」そして「カーボンニュートラルの経済学」の3冊を書き上げ、上梓した。ちょっと息切れしていたが、ようやくこの7月に、久々の新著を世に問うことになった。

『環境コンシャスでお得 リノベとリフォームのツールボックス』(木楽舎)
『環境コンシャスでお得 リノベとリフォームのツールボックス』(木楽舎)

それは、ちょっと長い題名だが、『環境コンシャスでお得 リノベとリフォームのツールボックス』(木楽舎)。建築、設備の専門家3人と私、エコハウスの住み手の合計4人の共著だ。中身は、題名のとおりで、住まいの快適性向上にコスパよくつながるリノベやリフォームを説明している。

説明は、3つの切り口からで、どこから読んでもいいようになっている。一つは、個々のリノベやリフォームの技法、例えば窓や壁の改修に着目した説明、もう一つは、徹底したリノベを一つの家で一時期に集中的に行ったケースで、4事例ほど取り上げた。

さらに、一つの家で経年的にリフォーム、リノベを積み重ねていったケースによる説明もあって、私は、ここを担当して執筆した。リノベの効果も室温変化などで具体的に説明するよう努めたし、他方で、費用も透明にして、コスパが分かるような工夫もした。実用書を心掛けたので、読者が、自信をもってリノベに取り組める人になれたら素晴らしい、と期待している。

リノベは本当に必要である。環境負荷を減らして人類が地球生態系の良い一部になるためには、家は、欠かせないターゲットになるが、それだけではない。

例えば、私が長く住んでいる東京・世田谷区では、全住宅の、なんと10%近くが空き家でその数は5万軒以上を数えると聞く(2018年の調査なので、今はもっと増えているかも)。

そして、空き家になった理由を調べると、老朽化で住むには不適、というものは空き家のうちの2%程度に過ぎないようで、大変もったいない状況にある。というのも、物価は上昇を続け、特に東京では、新築物件の平均価格が、マンションの場合は1億円を超えるなど、平均的な住民には住宅が高嶺の花になっているからである。

新築するより、あるいは高い新築物件を購入するより、折角今住んでいる家の居住性向上に投資をしたり、あるいは、空き家を良質な貸家や売家に改善したりすることの方が、効果的なお金の使い方ではないだろうか。その意味で、リノベーションの意義や効果は、もっともっと知られるべきであろう。空き家をリノベして、転貸、転売するビジネスはもっと盛んになるのではないか、と、つい夢想するこの頃である。

現代的な意義の高いリノベの宣伝のため、この本の販売に先行する行事を企画した。6月27日に、東京の京橋にある東京スクェアガーデン6階CityLabTokyoで、私がファッシリテーターになる鼎談を行う。有用なリノベを行う賢い施主さんになるためのノウハウなどを、メーカーの経験を聞きながら考えるセミナーである。

定員は、会場は50人、オンライン(Zoom)は500人で、参加費は無料。ふるって参加していただき、住み心地の向上へお金を使う意識と能力を養っていただきたい。

■手が届く、だけどほんとのリノベーション「環境コンシャスでお得!リノベとリフォームのツールボックス」新刊記念セミナー

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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キーワード: #脱炭素

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