記事のポイント
- 「地球沸騰化」と言われる中、夏休みの人気観光地に変化が起き始めた
- 涼しい地域での「クールケーション」が2024年夏の旅のトレンドに
- デンマークでは、気候変動に配慮した観光客に対する優遇施策も始まる
「地球沸騰化」時代を体感する猛暑が北半球を襲う中、夏休みの人気観光地に変化が見られる。南国のリゾート地での休暇に代わり、涼しい地域での「クールケーション」が新たなキーワードとして注目を集める。デンマークでは、気候変動に配慮した観光客を優遇する取り組みも始まった。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

自転車や電車で来れば、無料で下りれる
Credit: Press/CopenHill.
大手旅行誌コンデネスト・トラベラーは「2024年の旅のトレンド予想」の一つに、「クールケーション」を挙げる。欧州では、南イタリアやギリシャのような温暖な地域でのバケーションではなく、北欧やアイスランド、バルト3国など、涼しくて過ごしやすい地域への旅が話題を集めている。
デンマークの首都・コペンハーゲンでは、7月15日から、同市の「グリーン・イニシアティブ」に参画して気候変動に配慮した行動をした旅行客に、博物館・美術館ツアー、レンタルカヤック、無料の食事などの特典を提供する。
自転車や列車を使った移動や、清掃活動などの行動を、「CopenPay(コペンペイ)」という文化・体験のための通貨にすることで、旅行客のサステナブルな行動を促す。
20以上の観光スポットがこのプログラムに参画しており、デンマーク国立美術館ではプラスチックごみをアート作品に変えるワークショップを開催するほか、コペンハーゲン・サーフ・スクールでは、サーフィン後に30分間ビーチ清掃に参加したサーファーに無料でランチを提供する。
「観光は、環境に負荷を与えるものではなく、気候変動対応に前向きな変化をもたらす力としなければならない」と、同市の観光組織ワンダフル・コペンハーゲンのミケル・アーロ=ハンセン最高経営責任者(CEO)は意気込む。
「旅先での移動の在り方、消費、地元の人々との関わり方を変えることが重要だ」(同)。
■観光客の熱中症リスクに対策を
2023年の猛暑で、米国の国立公園では昨年6月から7月末までに少なくとも7人の観光客が熱中症で亡くなったと米CNNは報じる。
今年6月には、ギリシャを熱波が襲い、海外からの観光客が少なくとも6人死亡した。現地メディアは死因はおそらく熱中症だと報じている。
「高温に順応するには少なくとも1~2週間が必要だ。特に旅行客は、慣れない地域で熱波に遭遇すると、精神的にも肉体的にも準備ができておらず、危険な状況に陥る可能性が高い」と、米ミドルテネシー州立大学で気候インパクトを研究する地理学者アリサ・ハス准教授は指摘する。
観光客を熱中症から守るための観光産業側の対策も強化が必要だ。
「観光客の朝食のタイミングなどを使って、ホテルなど観光産業側が地域の暑熱に関するコミュニケーションを図り、旅行客の健康リスクへの意識を高めていく必要がある」と独フライブルク大学のアンドレアス・マツァラキス教授(気候変動とツーリズム研究)は提唱する。