CSRを経営に統合していくことの意味【戦略経営としてのCSR】

経営戦略の策定においてもゴールそのものよりも、KPI(重要業績評価指標)として具体的なゴールを設定と、その実現のプロセスを開示することの重要性を求めている。ゴールそのものは環境変化とともに見直すことを前提に、具体的な目標設定と実施プロセスの透明性に力点を置いている。

そして、それらのプロセスの情報開示が、統合報告の基本的な考え方となる。単に製品を開発しているということではなく、社会リスクという社会の潜在的なニーズに対して応えられる製品を開発しているという経営プロセスを示すことで、企業価値を高めようとするものである。

すなわちCSR活動とは、事業を通じて社会に貢献するという考え方から、解決困難な社会リスクに対し、事業を通して解決策を模索していく姿勢を示すことが企業価値を高めるという考え方に変化してきている。もはや、社会リスクに向き合うことを経営の優先課題とせざるを得なくなったのだ。

なお、実際に社会リスクを経営戦略に組込み対応していくには、外部のステークホルダーとの積極的なコミュニケーションが不可欠である。

それを積極的に行い戦略化することで、社会視点での経営を促し、社内のイノベーションを喚起するきっかけにする。それがCSR戦略だ。

例えば、①ソーシャルイノベーションを起こしたり、②これまで市場とは考えていなかった新市場の開拓の契機と位置づけたり、③社員のモチベーションを高めインスピレーションを与えるきっかけとしたり、あるいは、④競合他社との差別化戦略にもなるなど、CSR戦略は企業価値の向上に直接的な関わりを持つようになってきた。

社会リスクは、社会からの、解決してほしいというニーズであり、潜在的なマーケットでもある。社会リスクの問題解決と自社の収益拡大というWIN-WIN の関係構築こそが持続的な社会の発展のための関係構築に繋がる。

【おおくぼ・かずたか】新日本有限責任監査法人シニアパートナー(公認会計士)。新日本サステナビリティ株式会社常務取締役。慶応義塾大学法学部卒業。教員の資質向上・教育制度あり方検討会議委員(長野県)。大阪府特別参与。京丹後市専門委員(政策企画委員)。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。公的研究費の適正な管理・監査に関する有識者会議委員。京都大学・早稲田大学等の非常勤講師。公共サービス改革分科会委員(内閣府)ほか。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第3号(2012年12月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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