大久保 和孝 (新日本有限責任監査法人CSR 推進部長)
先月、経団連CBCC米国ミッションに同行し、米国のCSRについてヒアリングをしてきた。印象的だったのは、グローバル展開している米国企業の多くが、その企業におけるCSR活動の定義を明確にし、経営の一環として取り組んでいる点だ。
まず、CSRの範囲について、「社会貢献活動」、「経営管理(リスク対応、ブランド向上、従業員満足)」、「Creating Shared Value(CSV)」の3分野に定義付けし、経営上の位置付けを明確にしている。
そして、これら3分野のバランスの取り方をCSR戦略と捉えている。国内の社会課題対応を「社会貢献活動」、グローバル展開における社会課題対応をCSVと捉え、「新市場開拓」の手段として各事業部におけるイノベーション戦略と位置付けている点が興味深い。
経営管理上は、CSRの課題ごとに担当部門に落とし込み、例えば、リスク対応はリスク管理部門に位置付けるほか、従業員のモチベーションマネジメントへの活用など企業活動と明確な形でリンクさせている。特に、CSR上のリスクとして、消費者によるボイコット運動、従業員によるストライキ、訴訟対応の3つに重点をおき、リスク管理活動の一環として対策を強化している。
また、マテリアリティも絞りこみ、業種の特性に応じた重点的な取り組みがなされる傾向にある。現在関心の高い社会課題は、サプライチェーンにおける人権問題・鉱物資源、水問題、ジェンダー、所得格差などだ。また、アマゾンやスターバックスなどのグローバル企業で問題視されている節税対策をどこまで許容すべきかについても取り上げられている。