日本生命、パリ協定に整合した基準で投融資の評価へ

記事のポイント


  1. 日本生命は「日本生命トランジション・ファイナンス実践要領」を策定した
  2. 具体的な評価基準、根拠、評価プロセスなどをまとめた
  3. 「Parisパスウェイ」に沿っているかが投融資基準となる

日本生命はこのほど、「トランジション・ファイナンス実践要領」を策定した。同社が、トランジション・ファイナンスを行う際の具体的な評価基準、根拠、評価プロセスなどをまとめた要領である。企業の長期計画が、パリ協定に整合する科学的根拠に基づき国際的に信頼性のあるパスウェイ(「Parisパスウェイ」)に沿っているかを評価する。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

日本生命はトランジション・ファイナンス実践の要領をまとめた
日本生命はトランジション・ファイナンス実践の要領をまとめた

トランジション・ファイナンスとは、日本の脱炭素実現に向け、多排出産業が段階的な排出量削減を進めるための資金調達手段である。資金調達者である企業は、信頼性が高いトランジション戦略を策定・開示し、投資家は、企業との対話を通じ支援・促進するという企業と投資家双方の理解が前提となる。

同社は、「トランジション・ファイナンスとは、1.5度目標を目指すパリ協定と整合する企業取り組みに対する投融資である」ということを基本理念に据え、「その理念に沿っていることを、信頼性と透明性をもって説明できる」ことが重要だと考えている。

この基本理念を踏まえ、ICMA(国際資本市場協会、グリーンボンド原則やソーシャルボンド原則を公表)等の国際的なガイドラインにも整合した具体的な基準が次の3点だ。

1.企業の長期計画が、パリ協定に整合する科学的根拠に基づき国際的に信頼性のあるパスウェイ(以下「Parisパスウェイ」)に沿っているかを評価する

2.技術単体の可否ではなく、企業の長期計画・戦略を評価することで、企業の活動全般を機関投資家の立場から支援する

3.長期計画を評価することから、将来の不確実性を踏まえ、モニタリング・対話を通じて、計画変更などに柔軟に対応する

具体的には、企業レベルでの短・中・長期(2030・2040・2050年)の温室効果ガス(GHG)削減目標をベースに、企業の長期計画とParisパスウェイを比較して評価する。

企業レベルでParisパスウェイに整合しない場合には、次にアセットレベルの視点で評価する。仮に、企業レベル・アセットレベルの評価がともにParisパスウェイに整合しない場合には、通常の投融資の範囲内で企業の脱炭素取り組みを後押ししていく。

同要領では、GHG排出量が特に多く、脱炭素化に向けた金融面でのサポートが重要となる電力・鉄鋼の2業種を対象とする。

同社は、責任ある機関投資家としての役割を果たすべく、具体的な評価基準を信頼性・透明性の高い形で明示した要領を策定し、中長期の視点で企業の脱炭素取り組みを後押しする。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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