子育て中のキャリア主婦を中小企業の戦力に【サステナブルな世の中って?】

そこで思いついたのが、人材難に苦しむ中小企業と、働き場所が見つからないキャリアある子育て中の女性とのマッチングだ。中小企業が短時間でフレキシブルな雇用形態の正社員制度を導入し、専門性とキャリアある子育て中の女性に正規雇用としての働く場を提供する。キャリアを諦めたのは子育てが理由で、本人の能力的な問題ではない。

また、大企業ではビジネスマナーやコンプライアンス教育もしっかりしているので、その点も安心だ。生産性も高い人が多いと推測されるので、短時間でも成果は期待できる。

一方で子育て中の女性は、短時間勤務や休日が取りやすい、職場が近くて通勤が楽など柔軟な勤務形態でなければ安心して働けない。中小企業でもNPOでも条件に合う場が提供されれば、働きたい女性は少なくないはずだ。

しかし、ハードルも予想される。例えば、雇用条件の設定だ。優秀とはいえ、一部の女性だけが優遇されているとなると、職場の軋轢も生みやすくなろう。また、中小企業には負担の大きい社会保障費負担の雇用制度の整備も必要だ。

そのためには、公的な仕組みとして、「子育て&地域経済支援雇用制度」を整備していくこと、地域金融機関や地域のハローワークなどが働きたい女性と企業とのマッチングの場を作ること、また企業側がそうしたキャリア女性の就労を応援したくなる啓発活動が必要だろう。

こうした努力により社会インフラとして子育て中の女性と中小企業のマッチング市場が整備されば、中小企業の活性化支援、地域経済振興少子化対策、女性のキャリア支援などにつながると期待される。中小企業にとっては即戦力の確保となるだろうし、若い女性に対しては子育てのためにキャリアを諦める必要がないというメッセージになる。

大企業で働く女性も子育てで退職したらキャリアは終わり、ではキャリアアップのインセンティブは生まれない。しかし、退職後もキャリアで働ける職場があれば、安心してキャリアアップにも励める。また少子・過疎化に悩む地方で、子育て中の女性に働きやすい雇用の場が確保されれば、若い世代の定着を促す効果が期待される。そして、若い世代が増えれば地域社会と経済の活性化にもつながるのではないか。

【かわぐち・まりこ】2010年~2011年大和証券グループ本社CSR 担当部長を経て、2011年より大和総研調査本部主席研究員。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長、など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第4号(2013年1月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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