■目の前の食に関心を持たせる
一方、資源生物学科に就任予定の玉井鉄宗教授と、食料農業システム学科に就任予定の香川文庸教授は、別の観点から都市と農村の問題にアプローチ。
玉井教授は「食を大切にして、農業をリスペクトできる人が増えなければ、都市と農村をつなぐ問題は解決しない。目の前にある食べものがどのような人とつながっているか、といったストーリーを感じられる教育をしたい」と述べた。
農水省によると、2013年の日本の食料自給率は約39パーセント。これは主要先進国の中で最低となる数字で、国民は約6割の食料を海外からの輸入に頼っていることになる。また、日本の農業就業人口は、総人口のわずか2%。食べる人と作る人の距離が非常に離れている実態が、これらの数字からも見てとれる。
香川教授は、「農に触れることによって初めて、農を大切に考えることができる。そんな簡単に安くておいしくて安全なものは作れない、農業って大変なんだなという意識を持つためにも、消費者はもっと食材の作られ方に興味を持つべきだ」と語った。
これらの発言を受け、西辻代表は「なぜ暑い夏に、冬に旬を迎えるほうれん草ができるのか。そうしたことに興味を持つことから、農家と消費者との距離は近づいていく」と言及。
若い農家では、トマトのもぎ放題など、消費者の声を聞くためのイベントを開催していることから、「こうしたイベントに参加し、実際に農園に足を運んで、食への関心を高めてほしい」と語った。
トークセッションは全6回開催予定。第5回目の次回は8月30日、「地球規模の問題を解決する『新しい農業』のクリエイトと『食の循環』」をテーマに龍谷大学の瀬田キャンパスで開催する。