雑誌オルタナ78号:「alternative eyes」第51回
2024 年は80 カ国において、世界人口の半分強に当たる45 億人が選挙をする(した)「大選挙イヤー」です。すでにインド、欧州議会や英国、フランスなどが総選挙を行い、11 月には米国大統領選挙を控えています。日本でも総選挙を実施することが決まりました。
自民党の総裁選では「選択的夫婦別姓制度」の是非が一部で議論されました。実はこの制度、1996年に、法務大臣の諮問機関である法制審議会が導入を答申してから、すでに四半世紀以上が経っているのです。
国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)も2003 年、夫婦別姓を認めない日本の民法規定は差別的だとして、「結婚に際して旧姓を維持することを選択できるようにするための法律」を採択するよう、勧告しました。勧告は2009 年と2016 年にも繰り返されました。
ちなみに、世界の先進国で、選択的夫婦別姓制度を導入していないのは日本だけです。そして、問題となる民法の規定もわずか150 年ほど前の明治初期に生まれた、歴史的に見ると比較的新しい制度なのです。「ジェンダーギャップ指数」で世界146カ国中118 位という不名誉な位置にある日本は、まだ浮上のきっかけをつかんでいません。
日本の夫婦同姓制度を「ガラパゴス」だとすると、「脱炭素」の領域で日本がガラパゴス的発展を遂げてきたのが、「GX」(グリーントランスフォーメーション)です。オルタナ本誌今号(78 号)では、「日本のGX はガラパゴス」と題した第一特集を組みました。

思えば、この「GX」、発表当初から怪しい雰囲気に包まれていました。カーボンプライシング政策の中で特に重要な「炭素税」は骨抜きに。排出量取引市場は「キャップなきトレード」となりそうです。
そして、「アンモニア」です。本誌64 号(2021年3 月発行)でも詳報した通り、燃焼時にはCO2を出さないにしても、製造時にはアンモニアの量以上のCO2 が発生します。
2020 年10 月26 日、菅義偉首相(当時)が「2050年カーボンニュートラル(GHG 排出実質ゼロ)宣言」 を発表しました。そのわずか2 週間前(同年10 月13 日)、JERA がアンモニアを石炭火力と混焼し、将来的に専焼を目指すという 「JERA ゼロエミッション 2050」を発表していました。
10 月16 日には、首相官邸が「成長戦略会議」を開催し、グリーン成長(GX の前身)の議論が始まりました。菅首相の「カーボンニュートラル宣言」の前には、水素やアンモニアを軸とした「GX」の骨組みがほぼできあがっていたようです。
なぜ政府はここまで水素・アンモニアにこだわるのでしょうか。
知己の専門家の一人は、「戦後、原油やLNG、石炭などの化石燃料を海外から輸入し、東海道などの工業地帯で精製し、全国に配送する中央集権型のエネルギーシステムができあがって久しい。このシステムを守ろうという本能があったのでは」と推測します。
私もこの意見に賛成です。そこには政官財の強固なトライアングルも働いたようです。ただし、「ガラパゴス」はあくまで「ガラパゴス」に過ぎません。
先進国で、他にアンモニアをここまで強力に推進している国はありません。海外NGO からのアンモニアに対する批判も高まっています。メディアもNGO も、さらに厳しく監視していく必要があると考えます。