各国のすう勢は企業の取り組みを支援【ダイバーシティとジェンダー】

3.政府によるインセンティブの付与
女性のエンパワメントに積極的に取り組む企業をますます奨励して、こうした企業の活動を促進するために、政府が企業に財政的な支援を行ったり、税制上の優遇策を講じたり、インセンティブを付与したりすることがあります。イギリスやドイツは、育児費用を補助した企業を税制上優遇しています。韓国の取り組みは多彩で、企業内保育所、コンサルティング、育児などの休業を取得した従業員の代替要員の確保、出産などにより離職した女性が復職するための支援などの費用について、政府が企業に補助金を支給しています。

4.公共調達での優遇
女性は企業を経営する際に、資本や市場へのアクセスなど、いろいろな困難に直面するので、そうした困難を克服するために、さまざまな支援が必要とされています。また、女性の経営する企業の多くは零細企業であり、ビジネスの基盤が弱いので、政府の公共調達において、一定の条件を満たす女性が経営する企業を優遇するしくみもあります。
アメリカは、2000年に大統領令により、政府調達契約において女性が経営する企業と契約する割合を5%に引き上げるという目標を示しました。さらに、2010年に女性が経営する零細企業との契約額が最も低い83業種に焦点を当てて、「女性契約促進規則」を制定し、より実効的に進めています。

女性のエンパワメントは、すべての人の利益に

国連の潘基文事務総長は、2012年3月8日の国際女性の日に寄せて、「各国政府、市民社会、および民間企業に対し、ジェンダーの平等と女性のエンパワメントに全力を注ぐよう求めます。これは基本的人権であり、女性だけではなく、すべての人の利益を促進する力です」と述べました。各国でも、女性のエンパワメントで企業のビジネスを発展させて社会全体に好影響を及ぼそうという考えで、工夫が凝らされています。本年も国際女性の日に合わせて、国連でWEPsの会合が開催されます。次号は、WEPsの最新の状況を取り上げます。

【おおにし・さちよ】博士(法学) 立命館大学教授 専門は憲法、ジェンダーと法・政策。主著に『女性と憲法の構造』(信山社、2006 年)、「企業による人権尊重の展開」(法學志林111 巻1 号、2013 年)など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第6号(2013年3月5日発行)から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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