齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
今日、「CSRをマネジメント・プロセスに組み込んでいくことが大切である」という理解は広がりつつあります。しかし、実際にCSR をマネジメントの課題として捉え、実行し、管理していくためには、経営戦略および事業計画の中に明確に埋め込んでいく必要がありますが、それに着手している企業は極めて少ないのが現状です。
自社にとっての課題・目標を明らかにし、重要業績評価指標(KPI)を設定し、具体的取り組みを進め、達成状況を検証し、改善につなげていくよう管理すること。このプロセスにおいて企業経営者は、多様なステークホルダーの利害や意見に応えながら企業経営全体として統治していかねばなりません。
これまでCSRとコーポレート・ガバナンスは、別々に議論されてきました。CSRを社会貢献と理解していては、両者の関係性は認識できません。相互の関係性を理解し、具体的に対応していくことが重要になっていますが、CSR、コンプライアンス、経営企画、監査など関係する部署の担当者が共通の問題意識を持つべきだと思いながらも、実際には別々に動いているという状況が散見されます。
そこで本学会では、2013年9月「CSRとコーポレート・ガバナンス」を統一テーマとして国際ジョイント・カンファレンスを開催します。また、これに先立つ事前研究会(プレ・カンファレンス)を開催していくこととしました。
ステークホルダーと共にルール創造
第1回目となるプレ・カンファレンス(2012年11月)では、CSRとコーポレート・ガバナンスをどう考えるか、谷本寛治教授(早稲田大学商学学術院商学部)より基本的な考え方が示された後、いま日本企業に問われている課題について、齊藤誠氏(弁護士法人斉藤法律事務所代表)と大久保和孝氏(新日本有限責任監査法人シニアパートナー)から問題提起がなされました。