オルタナ総研統合報告書レビュー(34): 良品計画

記事のポイント


  1. 良品計画の目指す事業モデルは「地域分散資源循環業」
  2. そのための経営戦略が「公益人本主義経営」だ
  3. それは社員一人ひとりが「社会や人の役に立つ」という根本方針を具現化することだという

良品計画は「地域分散資源循環業」を目指しています。その経営戦略は「公益人本主義経営」です。社員が経営に参加し、会社への提言を行い、経営者と一体化を指し、社員一人ひとりが「社会や人の役に立つ」という根本方針の具現化を目指す経営を意味します。(室井 孝之=オルタナ総研フェロー)

MUJI REPORT2023
MUJI REPORT2023

良品計画の企業理念(商品力の強化、地域の活性化)の実現を突き詰めると、同社の事業モデルは「グローバル製造小売業」に加え、地域の資源を地域で循環させていく「地域分散資源循環業」の併用です。

究極的には、販売したすべての商品は不要となったら回収し、活用することを目指します。

更に同社は、企業理念を実現するのは人財であり、同社内の優先順位を「人が第一」「次にビジネス」「結果としての業績」と定めています。

良品計画は、社員一人ひとりが「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社会にとっての公益に貢献する事業活動を通じて営利を生み出すことで、公益と営利を持続可能な形で両立させることができる企業体でありたいと考えています。

そのために社員が、「社会や人の役に立つ」という理念や、自らの夢の実現に対する情熱と志を持って、地域や店舗で主体的に考え、自律的、自発的に行動することを大切にしています。

良品計画は2021年から、2030年までを第二の創業として「公益人本主義経営」を始めました。

「公益人本主義経営」とは言い換えますと、「オーナーシップを持った社員を事業活動の主役の据え、地域に根差した個店の活動、個々の社員やお客様、地域・社会の皆様、お取引先との活動が公益に寄与する」経営を指します。

「公益人本主義経営」の実現には、社員が経営に参加し、会社への提言を行いつつ、経営者と一体になることが必要になります。

そのため、社員一人ひとりのオーナーシップを醸成すべく、経営情報を積極的に発信し、経営陣と社員とのコミュニケーションの機会を増やしています。

特に2023年8月期からは、店舗と本部、従業員と経営層間のコミュニケーションをより強化し、従業員のエンゲージメントと経営に対する当事者意識の向上を図っています。

「公益人本主義経営」とは換言すると、公益を重視した社員の自発的行動の集積が、資本主義の原理に合致する強靭な事業モデルを創造する会社を目指す考え方です。

具体的には、社員が自社の株式の2~3割を所有できるようにし、株主である社員がオーナーシップを持って自分で考え、行動して、地域コミュニテイの立場から経営に物申せるガバナンスを構築するものです。

同社は社員の働き方は、モチベーションではなくエンゲージメントと説きます。前者は自分のためですが、後者は社会のために意義あることにやりがいを持って取り組むことを意味しています。

同社は、2030年に実現したいことを「日常生活の基本を担う」と「地域への土着化」と定め、その実現に向けて「個店経営、コオウンド経営(社員による共同経営)の実践」「感じよいオンラインの提供」「ESG経営のトップランナー」を掲げています。

「ESG経営」では、「サプライチェーン・マネージメント」「原材料調達」「資源回収・再商品化」「環境への配慮」「気候変動」「人財育成」「D&I」が記載されていますので、今後は各々の進捗について更なる情報開示をされてはいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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