編集長コラム) OSI(オープン・ソーシャル・イノベーション)という新潮流

発起人のカヤック柳澤大輔社長は、「鎌倉をより良くしたいという思いで立ち上げた。『競合他社』という枠を超えて、みんなでアイデアを出し合い、協力することで地域を活性化していきたい」と話す。

神戸市では、公益財団法人神戸国際医療交流財団などの研究機関や企業が地域の医療施設のハブとなり、医療技術の発展や若手人材育成を目指す取り組みが始まった。10月2日、開所式を開いた伊藤忠メディカルプラザ(神戸市・中央)がそれで、建設費5億円は、伊藤忠商事が寄付した。

若手医療従事者の育成をめざす伊藤忠メディカルプラザ
若手医療従事者の育成をめざす伊藤忠メディカルプラザ

もともとオープン・イノベーションは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのヘンリー・チェスブロウ客員教授が提唱した考え方で、日本企業の間では10年ほど前から注目されてきた。

日産自動車が積極的に行なってきたほか、富士通も今年3月から立教大学と共同プロジェクトを進めている。学生が普段不便だと思っていることや問題点を、富士通の技術を使って解決する新商品・サービスのアイデアを集める。

こうした試みは「アイデアソン」(Ideathon)と呼ばれ、テーマを定めた上でチームごとにアイデアを出し合い、それをまとめていく形だ。これをオンライン上で行なう「ハッカソン」(Hackathon)、特定の社会課題について少人数のグループに分かれて話し合う「ワールドカフェ」や「フューチャーセンター」も、オープン・イノベーションの一種とされている。

企業が社会基盤の上に成り立っている以上、その社会が抱える課題解決に企業が協力するのは自然な流れであり、企業側にも自社製品やサービスの利用につなげたいという戦略がある。

企業のCSR活動は、一社だけではノウハウや人的リソース、資金などの限界があるため、業種や規模を問わない複数の企業が協働することや、そこにNGO/NPOや自治体が関与することで、活動の実効性をさらに高められるメリットがある。こうした観点から、オープン・ソーシャル・イノベーションは今後も日本の各地で生まれ続け、地域を大きく変えていく可能性が高い。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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