■清酒業界の活性化で日本が潤うか
清酒業界を取り囲む現状は厳しい。「国内の酒類全体の消費量は1996年ごろをピークに減少している。原因のひとつには国民の健康志向が考えられる。清酒の消費落ち込みに関しては、食事やライフスタイルの西洋化も大きく影響している」と若井氏は言う。
山崎英恵准教授(食品栄養学科就任予定)は「和食がユネスコの無形文化遺産に登録された。その日本食には日本酒が不可欠。フランスでは、政府がチーズの普及に貢献した人にシュヴァリエ(騎士)の称号を与える制度を設けている。日本酒にも『酒ヴァリエ』があっても良いのでは」と提案。
酒造は、原料となるコメの生産から、製造、販売、流通、消費のほとんどが国内で行われる地場産業だ。
長年、日本各地の在来品種を収集し研究してきた猪谷富雄教授(資源生物科学科就任予定)も「酒づくりそのものがひとつの文化。稲作を中心に発達してきた日本人の文化の原点」と言う。
猪谷教授が指摘するように、こうした産業が安定的に継続することは、酒蔵を中心とした情緒ある街並みや、里山の景観維持にもつながる。
若井氏は「酒づくりは伝統産業だが、日々良い酒を追究しているため、美味しさは毎年更新されている。そういう意味では、清酒史上今が最も美味しいお酒。今後も京都の農家と安定した契約を結び、連携を強めたい」と今後の豊富を語った。
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