研修でマネジメントの力を付ける【ダイバーシティとジェンダー】

さらに、各々の所長が仕事をしやすくなるように、所長の下のポストの全職員にリーダー研修を実施し、マネジメントの重要性を共有しました。すると、所長の業務が明確になり、社員が所長の考え方を理解して行動するようになり、一つ一つの事業所の業績が大きく上がりました。

マネジメントの重要性を理解するようになった女性の社員は、良いマネジメントが現場の介護サービスも良くすることに自ら気が付くとともに、「女性である自分もマネジメントができる」と自覚するようになりました。さらに、研修受講者は受講できなかった同じ職場の仲間に学んだことを教えるよう義務付けて「教えられること」と「教えること」をワンセットにして実施することで、研修の効果を高めました。

マネジメント力を付けた女性は、ビジネスの場面でも大きく貢献します。マネジメントの研修を受けた所長クラスの社員が各エリアや事業所の書類整備のプロジェクトを行って統一した書式を導入して生産性を高めました。事業所内は整理整頓されて業務が効率的になり、残業時間が大幅に減りました。生産性が大幅に向上したので社員の給与は増加し、東電パートナーズは同業他社に比べて約100万円多い平均年収を実現しています。

どんな企業でも女性の社員に経営者の視点が身に付けば生産性が高まり企業活動が良くなります。マネジメント研修の対象は可能性の見える社員の全員として、研修の内容は一人ひとりの社員にマネジメントの力が付くように個別に吟味して行うことが効果的でしょう。

次回は、WEPsの原則5「企業開発、サプライチェーン、マーケティングの実務」についてご紹介します。


【WEPsの原則4】教育と研修
a. すべての役職レベルとビジネスのすべての領域において、女性の地位向上への道筋を拓く職場の方針とプログラムを開発し、女性の仕事ではないとされてきた領域にも女性が参入できるようにしましょう。

b. 企業が支援するすべての教育・研修プログラムへの平等なアクセスを保障しましょう。これには、識字教室、職業訓練、情報テクノロジー研修が含まれます。

c. フォーマルおよびインフォーマルなネットワークとメンタリングの機会を平等に提供しましょう。

d. 女性のエンパワメントと男女のインクルージョンに積極的な影響をもたらす企業活動事例を明らかにして発表しましょう。

【おおにし・さちよ】博士(法学) 立命館大学教授 専門は憲法、ジェンダーと法・政策。主著に『女性と憲法の構造』(信山社、2006 年)、「企業による人権尊重の展開」(法學志林111 巻1 号、2013 年)など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第8号(2013年5月7日発行)から転載しました)

大西 祥世氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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