日立、「留職」プロジェクトが働き方を変える

名島:もともとは、人事部からの打診で、多忙ゆえにすぐには行けなかったのですが、1年後に参加することができました。

宮下:自分は上司からの打診がありましたが、もともと総務部からの情報があったので、この留職は知っていました。

ただ、「新興国のNPOの支援」にイメージが湧かなかったのですが、クロスフィールズとの話し合いの中で、だんだん興味が湧いてきて、今以上にやる気が出て、視野も広がるのではないかと自分自身でも期待感が出て、このプログラムに参加しました。

■ インドネシアのメディア支援

――2カ月間の研修ですが、その間、仕事を中断するのは大変ではないですか。

宮下:僕の場合は、設計部にいるので、ある程度仕事が落ち着いてから留職に臨みました。

名島:僕は、プリセールスといいますか、お客様の情報システム部門に製品紹介のプレゼンや技術支援をする技術営業とでもいう役目で、2カ月間抜けさせてもらうのにはなかなか苦労しました。

派遣先はインドネシアのジャカルタにあるメディア支援のNPOでした。

名島さんは、インドネシアのジャカルタにあるメディア支援のNPOで組織内システムを作成
名島さんは、インドネシアのジャカルタにあるメディア支援のNPOで組織内システムを作成

インドネシアには大小多くのメディアがありますが、特に中小のメディアを教育することによって、情報の質を高め、もっと安く、もっと幅広い層に情報を伝えることを通じて、インドネシアの暮らしを向上させるという使命を持っている団体にお邪魔しました。

テレビや新聞、ラジオ、Webのメディアのジャーナリストをトレーニングしたり、コンテンツ提供などの橋渡しをしたりしています。

――具体的には何をされていたのですか。

名島:そのNPOは、例えばUSAID(米国国際開発庁)などから寄付をもらって、様々な教育イベントや時には放送局をつくったりしています。

そういったプロジェクトの進捗やお金の流れを管理するシステムがなく、すべてメールと電話、そして個人ごとのPCにバラバラに記録されていて、共有フォルダすらない状況でした。

ですから、後から分析をすることもできず、今後の改善や組織の拡大が難しいということで、組織内システムを作ってほしいということでした。

――日立製作所ほどの大企業になれば、共有フォルダはむろんのこと、社内的な情報共有システムがあるはずですが、基本的にそういう情報システムがないということですね。

名島:結局、マネージャーや担当者の頭の中にだけしかなく、寄付団体から、「今はどういう状況ですか」という問い合わせがあっても、3人のマネージャーが伝言ゲームで応答している状況でした。

組織といっても12人の団体(現在、15人程度)ですが、そのために組織内の業務システムの構築を始めました。

しかし、要求をすべてできるわけではないので、優先順位の高いものに絞らせてもらいました。

kouma

高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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