壊れたら「修理する」ライフスタイルへの移行を

記事のポイント


  1. EUは「修理する権利指令」を公布し、加盟国は国内法の整備を急ぐ
  2. この指令は、法的保証外であっても製造者に修理を行う義務を定めた
  3. 「修理する」ライフスタイルへの移行を後押しするブランドを紹介する

欧州では、「捨てる」から「修理する」ライフスタイルへの移行が進む。転機は2024年7月にEUが公布した「修理する権利指令」だ。この指令によって、EU加盟国は、2026年7月31日までに国内法を整備し、修理しやすい環境をつくる。(サステナビリティ・プランナー=伊藤 恵)

欧州では、修理オンラインプラットフォームを立ち上げ、消費者が修理業者を見つけやすくする、

物を長く愛用したいと感じても、保証期間が過ぎると修理を躊躇(ちゅうちょ)することが多いのが現実だ。修理を依頼すると、その費用が新しい製品を買うよりも高くつくこともある。

このような状況から、消費者は製品が壊れた際に修理を選ぶのではなく、廃棄や買い替えを選びがちだ。持続可能な社会の実現に向けて、先行する欧州ではどのような取り組みが行われているのだろうか。

欧州は法律で「修理」を義務付け

EUは、2024年7月に「修理する権利指令」を公布した。この指令は、製品の持続可能性を向上させるための取り組みの一環として、修理を促進することを目的としている。

加盟国は、2026年7月31日までに国内法を整備し、このルールを実施しなければならない。新たに導入される「修理する権利」の下で、製品の製造者に修理が義務づけられ、消費者は修理サービスへアクセスしやすくなるとともに、必要な部品や情報の提供も製造業者に求められることになる。

この指令は、消費者が購入した製品に不具合が生じた場合、法的保証外であっても製造者が修理を行う義務を定めている。消費者が修理業者を見つけやすくするため、欧州修理オンラインプラットフォームが開設される予定だ。

オランダ発祥「リペアカフェ」の広がり

壊れた電気製品や衣類を持ち込み、ボランティアが修理をサポートしてくれるリペアカフェは、2009年にオランダ・アムステルダムで生まれた。

この取り組みの背景には、無駄を減らし、資源を大切にする意識があり、日々多くの製品が修理のために持ち込まれているという。

多くのリペアカフェは単なる修理の場だけではなく、地域のコミュニティ形成にも寄与している。たとえば高齢者が集まり、技術を教え合うことで社会とのつながりを生み出してきた。

修理が難しい製品を、寄付を通じて必要な人々に届けるといった活動も行う。リペアカフェはいまやオランダを飛び越え世界35の国と地域で2000以上のコミュニティにまで広がりをみせている。

スマートフォンも自分で修理する時代へ

オランダ発のエシカルなスマホ「フェアフォン」は、自分で修理ができる画期的な仕組みだ。多くのスマートフォンが接着剤の使用や複雑な構造によって修理が難しい中、フェアフォンの設計はユーザーによる修理を容易にすることを目的にしている。

モジュラーデザインを取り入れることで、ユーザー自身が部品を手軽に交換・アップグレードできるようになっている。これにより、製品の寿命が延び、電子製品の廃棄物の削減やCO2排出の抑制にも大きく寄与している。

フェアフォン社は、原材料の調達や労働環境にも配慮した取り組みを行っている。フェアトレードの原材料を使い、労働者の生活満足度向上に努めている。製品のライフサイクルだけでなく、製造過程においても持続可能な社会を目指している。

このように、修理文化の進化は、個々の製品を大切にするだけでなく、持続可能な社会の実現にも寄与する。日本もこの潮流にのり、製品を長く使える社会システムに変化していくことが願われる。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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