サステナ開示の欧州基準、日本へ

サステナビリティに関する報告を義務付ける「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」が2023年1月、欧州連合(EU)で施行された。50 年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール」の一環で、企業の情報開示を強化する狙いだ。日本企業はどう向き合えば良いのか。(中畑 陽一)

上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR 及びCSRディレクターを務め、関東・東海地方中心に約70 の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部でサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。オルタナ総研フェロー。

CSRDに基づく開示基準は、IFRS(国際財務報告基準)やGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)などの開示基準との相互運用性向上を図っているほか、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などに基づくデューディリジェンスの観点も盛り込んでいる。

人権や環境に関するデューディリジェンスを義務化する「欧州コーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令案(CSDDD)」(24年7月発効)は、CSRDと補完関係にある。

CSRDは「ダブルマテリアリティ」ベースであることが重要な特徴だ。企業が社会・環境に与える影響に関するマテリアリティ(インパクトマテリアリティ)と、社会・環境が企業の財務に与える影響に関するマテリアリティ(財務マテリアリティ)の両方の観点が必要という意味だ。

CSRDに関するサステナビリティ情報開示の具体的な基準策定をEUから一任されたEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)は22年4月、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)第1弾の公開草案を発表。24年1月に発効した。

ESRSは「分野横断基準」(ESRS1・2)と「トピック基準」に分けられる。

開示基準について、企業にとって特に大きな影響が考えられるのは、第三者保証(当初は合理的保証より簡便な限定的な保証)を課す点だ。

限定的保証に関する基準は26年10月1日までに、合理的保証に関する基準は28年10月1日までに欧州委員会が採択する予定だが、まずは加盟各国の定めを抑えることが必要だろう。

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域外の企業も対象に

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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キーワード: #CSR

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