記事のポイント
- 欧州で「ローカルフェアトレード」と呼ばれる動きが加速している
- 背景には移民労働者の急増を受けた一次産業における搾取労働の深刻化がある
- フェアトレードのあり方も多様化が進む
フェアトレードはもともと開発途上国の原料を対象とした国際イニシアティブだが、実はヨーロッパでは国内フェアトレードのパイロットプロジェクトが注目を集め始めている。(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長=潮崎 真惟子)
フィンランドでは、ワイルドベリーの摘み取り作業においてタイなどアジアからの移民労働者が数多く働き搾取的な環境に置かれている。
こうした搾取労働・人身売買への懸念からフィンランド外務省がタイ・カンボジアなどからのベリー摘みのビザ申請を受け付けないと今年発表する程に問題視されている。
フェアトレード・フィンランドは同国の食品小売大手ケスコ社などと連携し、既存の国際フェアトレード認証を一部調整する形でベリー業界の実態に即した新たな基準を作った。
2024年夏のベリーの摘み取りシーズンから新基準を適用した国内フェアトレードをパイロットプログラムとして行う。
その他にもイタリアのトマト、フランスのミルクなどで類似のプロジェクトが始まっている。こうした欧州の動きの最大の背景は、移民労働者の急増を受けた欧州域内の一次産業における搾取労働の深刻化だ。
欧州で働き手が不足する一次産業に、中東やアジア、アフリカなどからの移民が多く流入しており、移民労働者を守る仕組みの整備が追い付いていない。
このような先進国内のフェアトレードはノース・トゥ・ノース(北から北へ)と表現される一方で、サウス・トゥ・サウス(南から南へ)の開発途上国内フェアトレードの流れもある。
■「公正な取引」への需要高まる