真に持続可能な綿花栽培を目指す「ベター・コットン・イニシアティブ」――下田屋毅の欧州CSR最前線(43)

■ 農家の暮らしを守る

――BCIは農家と農業労働者の暮らしや労働条件の支援も行っていると聞いています。

BCIは、次の6つの生産原則を確立しています。

1)適切に農薬を使用しながら、作物保護への取り組みの有害な影響を最小化する
2)効率的に水を使用し、水資源の利用可能性を考慮する
3)土壌の健全性を考慮する
4)自然生息地を保全する
5)繊維の品質ケアを行い、維持する
6)きちんとした労働基準を促進する

ベター・コットン保証プログラムは、パフォーマンススケールに取り組んでいます。

例えば、妊娠・授乳中の人は農薬に触れることはできません。健康で訓練を受けた18歳以上の人だけが農薬の準備をしたり、使用したりできます。また、労働者や従業員は団体交渉権の権利を有しています。

――特に綿花の消費において、企業の環境また社会的パフォーマンスへの将来の傾向についてどのようにお考えですか。

コストとならない限り、消費者がより持続可能で責任のある製品を求める傾向はあると思います。近年、繊維産業は、マスメディアで認知度を上げていますが、それでもなお平均的な消費者の中では、繊維産業の影響に対する著しい誤解があります。

BCIは、より持続可能な方法で生産された綿花を提供することで、企業にとって、原料である繊維が失われるリスクを削減しています。

アディダス、H&M、IKEA、リーバイス、マークス&スペンサー、ナイキなどの国際的なブランドは製品にベター・コットンを使用しています。これらの企業とすべてのBCIメンバーのサポートは、より多くのベター・コットンが市場に参入してきていることを意味します。

2013年、世界で生産された綿花の3.7%がベター・コットンでした。2020年までに、私たちはこの数字を30%にしたいと考えています。それは、農家にとって、環境にとって、綿花産業にとって、私たち全員にとって良いことなのです。

――BCIは、企業が境界を超えて公的機関、民間企業、ボランティア団体との関係性を築く手助けをしていますね。

私たちのパートナーは世界中でベター・コットンをスケールアップさせる上で重要な役割を果たしています。パートナーは一般的に特定の地域において、ベター・コットンへの重要なリーダーシップを発揮しています。

彼らは、農場レベルの研修や支援活動を通して、ベター・コットンが採取される環境や農家、その労働者の生活に与える影響の証拠となる農場レベルのデータを収集するために、農家がベター・コットン・スタンダード・システムに参加できるように農家の能力構築にも責任を負っています。

私たちはブラジル綿花生産者協会、コットンオーストラリア、マリのAPROなどの国内または地域の綿花生産者の組織とパートナーを組んでいます。

中国政府、モザンビークのIAMなどの綿花の生産・マーケティング・加工・販売と関わりのある政府や行政機関もあります。

ベター・コットンを育て、促進し、販売するために特別に作られたトルコのIPUDなどの機関や、Cotton Made in Africaなどの綿花産業におけるサステナビリティの促進に尽力するイニシアティブがあります。

私たちがBCIスタンダードを農家レベルでどのように導入するかという点において、導入を行うパートナーは、私たちのモデルにとって非常に重要となります。

彼らは、直接的な農家への働きかけ、または訓練されたトレーナーを通して、ベター・コットン・システムが導入され、しっかりとしたデータを農場レベルで収集することが可能となるように能力構築作業を実施し、農家がベター・コットン・システムに参加することを可能とする環境を創り出します。

◆1月23日「責任のある綿花調達セミナー」のお知らせ
興和株式会社は1月23日、BCI、フェアトレードジャパン、テキスタイルエクスチェンジと共に「責任のある綿花調達セミナー」を実施します。

本セミナーは、日本の一流の小売業者やブランドに、サステナブル・コットンという選択肢の認識と理解をもたらすことを目的としています。ベター・コットン・イニシアティブ・アメリカ地域メンバーシップエンゲージメントマネージャーのダレン・アブニー氏も登壇します。

イベントは午後1時半から6時まで、千駄ヶ谷区民会館(東京・渋谷)で開催されます。申し込みは、Textile Exchangeイベント事務局(興和株式会社開発生産部内)まで。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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