記事のポイント
- 米FBIがDEI部門を12月に閉鎖したことが分かった
- 共和党議員らはFBIのDEI施策に批判を強めていた
- トランプ氏は、DEI部門のすべての文書を保存するように要求した
米FBIがDEI(Diversity, Equity & Inclusion=多様性、公平性、包摂性)部門を12月に閉鎖したことが分かった。米政治専門紙ザ・ヒルなど各紙が報じた。共和党議員らはFBIのDEI施策に批判を強めていた。トランプ次期米大統領は、DEI部門は「腐敗した部門」だとして、すべての文書を保存するように要求した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

トランプ次期米大統領は、連邦政府行政機関のDEI施策を廃止することを選挙公約に掲げていた。各紙報道によると、FBIは閉鎖理由を公表していないものの、トランプ氏の大統領就任の影響があると見られる。
共和党議員やMEGA(トランプ支持者)によるDEI批判も過激化していた。
■ ロサンゼルスの火災はDEIとは関係ない
典型的なのは、1月7日に起こったロサンゼルス山火事に関してだ。共和党議員や保守派活動家らは、「消防局は消防活動よりもDEI施策を優先した」とするSNS投稿を繰り返した。ロサンゼルス市消防局(LAFD)のクリスティン・クローリー消防局長は、女性として、LGBTQ当事者として初めてトップに立った人物だ。
クローリー消防局長は、「DEI hire(DEI採用)」と中傷された。DEI採用とは、多様な人材を採用し、だれでも能力を最大限に発揮できるように、公平で包摂的な環境づくりを目指す取り組みだ。
だが、最近では、DEI採用という言葉が、政治的に利用されるようになった。「能力がないのに、DEI推進のために採用された」という侮辱的な意味でも使われる。例えば、トランプ大統領は、民主党の候補だったカマラ・ハリス氏を「DEI候補」だと攻撃していた。
こうしたDEI批判に対し、ショーン・ハーパー南カリフォルニア大学教授は、米タイム誌オンライン版で、「ロサンゼルスの火災はDEIとは何の関係もない」と主張した。
同教授は「何十年も LAFD で消防士、救急救命士、エンジニア、消防検査官、第1大尉、第 2大尉、大隊長、副署長として勤務し、署のトップリーダーに昇進した、疑いようのないほど優秀な女性が、DEIと引き換えに、公共の安全を軽視したということは、まずあり得ない」とした。
「DEIを攻撃する者は、この機会を無謀にも利用し、最終的には米国人をさらに分断することを目的とした計画を推進している」と反論した。