■ すでに109社が90億以上を支援

原田 ギャップイヤーも期待が大きかったが、結局、日本の古い文化が足かせになり、大規模での導入には時間がかかりそうだ。その思いが、「トビタテ!留学JAPAN」の構想に活かされた形だが、文科省だけではできなかったのでは。
船橋 民間の知恵、力も投入し一体となってオールジャパンで取り組むべきと伝え、産官学でやろうと。2013年に入ってから、下村大臣にヒアリングのため、企業のTOP層に会ってもらう機会をつくるなど準備を進めた。私は2013年11月、文科省の今のポストに就き、まず留学生の数を2020年までに倍にしようと決めた。現在年間6万人の大学生を12万人に、3万人の高校生を6万人にする。
そのために民間から目標金額200億円の基金を集める。コンセプトもがらりと変えた。従来の留学は成績優秀者が単位・学位のために学問を学ぶという形であった。これに対し、成績は関係ない、インターンシップ、ボランティア、フィールドワーク、プロジェクトベースドラーニング(PBL)など実践型だけでもOKとした。むしろ、単位取得は必ずしも不要とし、逆に実践活動を留学計画の中に必ず盛り込むことを応募条件としている。
原田 企業もこういう仕組みは必要だと思っていたはずだし、現場体験で養われる能力を持つ学生を求めているのではないかと思う。企業側の反応はどうか。
船橋 ソフトバンク、三菱商事、トヨタ、東進ハイスクールのナガセなど、ここ1年で100社以上から90億円以上の寄付をいただく目途がたった。国家プロジェクトで理念に賛同してもらっているし、タイミングもよかった。求められていた留学プログラムだと実感した。日本になかったが、世界でも例がない先進的なプロジェクトだ。
原田 トビタテ留学の特徴を詳しく。
船橋 募集は、1)新興国コース、2)自然科学系コース、3)世界トップレベル大学コース、4)多様性人材コースの4つでスタート、2015年から将来日本の各地域で活躍することを目指す学生のための地域人材コースと、高校生コースを新設した。
現在、大学生等を対象とした上記4コース(第3期生)と、高校生コースについて募集中。地域人材コースの応募は3月に開始予定だ。
マーケットとしての新興国、理科系学生支援と合わせ、世界をリードする欧米での人脈づくり、さらには多様なジャンルでの発信力強化などを意識した。留学時は「アンバサダー」(大使)だが、帰国後は、留学や海外の良さ、面白さを伝えてくれる「エバンジェリスト」(伝道師)の役割を留学生には期待している。
■ 300人以上が59カ国に留学