欧州最大の資産運用会社が予測、「責任投資」の行方は

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記事のポイント


  1. 欧州最大の資産運用会社アムンディが、「責任投資の状況」を発表
  2. 2025年の注目点を、クリーンエネルギーの拡大など9点にまとめて指摘
  3. 課題として、気候変動などによるリスク増大に警鐘を鳴らした

アムンディは2025年1月、「責任投資の状況(2025年版)」を発表し、2025年に注目すべき事柄を指摘した。クリーンエネルギーの拡大、⾦融ソリューションへの需要の高まりなど予測する一方で、気候変動によるビジネスモデルのリスク増大や更なる規制緩和の必要性に警鐘を鳴らした。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

欧州最大の資産運用会社アムンディ(本社:仏パリ)は2025年1月、「責任投資の状況(2025年版)」を発表した。

「責任投資」とは、アナン国連事務総長が2006年、世界の有力なアセットオーナーに対し、投資においてESG要素を考慮する「責任投資原則(PRI)」に則った投資を指す。「原則 1」 は、「投資意思決定においてESG要素を考慮し」、「原則2」は、「ESG要素を考慮して積極的にエンゲージメントや議決権行使を行う」と謳っている。

アムンディは、2025年に注目すべき事柄として次の9点を掲げた。

1.クリーンエネルギーは2023年、世界に3200億ドルの経済効果をもたらし、投資⾦額は 2:1 に迫る⽐率で化⽯燃料を上回った。この⽐率は今後も拡大し続ける。

2.先進国はクリーンエネルギー開発に残る障壁を克服し、新興国への投資拡大に道筋をつける必要性がある。クリーンテクノロジーへの投資は継続的に推進される。

3.気候変動、生物多様性、健康、⾷糧、⽔といった環境および社会的な危機は、多くのビジネスモデルをリスクにさらす。

4.投資家の54%がポートフォリオにおける責任投資への配分を増やすと回答しており、ニーズは依然高い。

5.実社会への具体的インパクトを求めるなかで、2025年には、グリーンボンドやネイチャー‧デット‧スワップ、種々のインパクト投資を含め⾦融ソリューションへの需要が高まる。

6.生物多様性や社会面の諸課題に焦点を当てる新たな評価基準により、気候変動ストレステストを含むリスク管理評価の改善につながる。

7.⾦融商品を販売するうえでの実務上の要請をきちんと踏まえることが、投資家が実際に持続可能性に関する考え方を反映させるうえで極めて重要となる。

8.複雑な規制を整理することがサステナビリティ‧ファイナンスに対する投資家の理解を⾼める。

9.各国の規制がばらばらの中で、企業や⾦融機関においては、規制遵守をする上での負担を下げるために国際的なアラインメントと相互連携に焦点があたる。

アムンディは、「責任投資市場は 2024年、規制当局の監視が強化される中で深化した。2025年は、投資家としてトランジッションのなかにある投資機会を捉える上で、実社会にインパクトをもたらす戦略が大切になる」と強調した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG

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