水上 武彦(株式会社クレアン)
従来の中期経営計画のやり方を見直す企業が増えているようです。三菱商事は、従来の3 年単位の収益目標と事業戦略による中計をやめ、長期的な「ありたい姿」を設定し、そこからバックキャスティングで、短・中期の活動計画を設定するやり方に変えています。
固定的な中計では、現在のような不確実性の高い事業環境に適切に対応できないとの認識のもと、長期的な「目指す姿」を共有しつつも、柔軟な事業運営を可能とするためです。
私は、以前から、日本企業の多くが、同じようなプロセスで同じような内容の中計を策定していることを不思議に思っていました。中長期戦略には、企業の独自性が反映されるべきで、その作り方にも多様性があるべきです。
多くの日本企業がボトムアップの積み上げ方式で中計を策定していますが、これにも疑問を持っていました。カルビーの松本晃会長が「現状を積み上げて作る中期経営計画は機能しない」と言っていますが、私も同感です。
海外では、例えば、ユニリーバが2020 年ビジョンである「サステナブル・リビング・プラン」を軸に戦略を展開しているように、中長期戦略にも多様性があります。日本企業も、市場や事業の特性、理念や強みなどに応じて、独自性のある中長期的戦略があってしかるべきです。
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三菱商事のように、長期的な「あるべき姿」を描き、そこからバックキャスティングで短・中期的な計画を策定・推進するのは、有効な手段の一つです。ただし、安定成長の時代と違い、今の時代に長期的な事業環境の変化を予測することは容易ではありません。「シナリオ分析」の活用を検討すべきでしょう。