レジリエント・カンパニーの強さは、株価推移で実証されている。ピーター氏は、独自に調べた20の企業の株価とスタンダード&プアーズ社の株価指標「S&P500」を比較した。比較した年は、リーマンショックの5年前の2003年末と5年後の2013年末。
比べた結果、10年間のスパンで、レジリエント・カンパニーはS&P500のリターンを約200%上回っていることが分かった。さらに、市場が落ち込んでいた2008年末にS&P500は2003年比で19%下がったのに対して、レジリエント・カンパニーは7%上げていることも分かり、不景気に対する耐久性の高さも証明された。
シンポジウムでは、ピーター氏が日本のレジリエント・カンパニーとして認めるたねやの山本社長も登壇した。同社は明治5年創業で、創業の地、近江の住民から愛されながら140年以上にわたり繁栄を続けてきた。
「和菓子を作れるのは、原材料があるおかげ」という精神のもと、山本社長は「自分で作ったものを自分で売る」という哲学を社員に伝える。農園作業も店舗作りも、業者に任せないで社員自らが行う。近江八幡に構えるラコリーナ近江八幡メインショップの周辺には、社員たちでドングリの種を植え、成長を見守り続けている。
接客方法もユニークだ。たねやでは、お店に来ていただいた感謝の気持ちをまず伝える。そのため、第一声は「いらっしゃいませ」ではなく、「ようこそ、近江へ」と挨拶するように指示した。味を伝えるときにも、マニュアルを参考にするのではなく、その和菓子を食べたスタッフの感覚で説明するようにしている。
地元住民や社会、環境に配慮した経営を続け、「次の世代が引き継ぎたがるような企業としてあり続けたい」と山本社長は話した。