いつまでも人手不足を解消できない職場の3つの思い込みとは

記事のポイント


  1. 慢性的な人手不足にあえぐ職場では、採用に関する3つの思い込みがある
  2. 「理想の人材がいる」「待てば応募が来る」「現場が何とかする」というものだ
  3. 「年齢や性別まで条件に加えると、採用の可能性を狭めてしまう」と専門家

慢性的な人手不足にあえぐ職場では、採用に関する3つの思い込みがある。一つ目は「理想の人材がどこかにいる」、二つ目は「待っていれば応募が来る」、三つ目は「採用が遅れても現場が何とかしてくれる」というものだ。労働市場が専門の研究者は、「年齢や性別まで条件に加えることで、採用の可能性を狭めてしまう」と指摘する。(オルタナ編集部=松田 大輔)

リクルートは3月10日、2024年度下半期の転職市場の分析を公表した。同社が提供する転職サービス「リクルートエージェント」のデータなどを基に、ITや小売など18業界の求人や求職者の動向をまとめた。

分析によると、求人数はコロナ禍前の約2倍の水準に達した。特に増えたのが、IT人材や電気、機械、化学系のエンジニアの求人だ。

企業間の採用競争が過熱する中、慢性的な人手不足にあえぐ職場も多い。リクルートワークス研究所で労働市場の分析を手がける孫亜文・主任研究員によると、企業側の「思い込み」で人手不足を解消できないケースも目立つという。

一つ目の思い込みは、「理想の人材がどこかにいる」というものだ。孫・主任研究員は、選考基準を策定する際、企業は「願望」を盛り込んでしまう傾向があると指摘する。その願望には職務経験だけでなく、性別や年齢、転職回数の少なさ、経歴のブランクの少なさなども含まれる。

孫・主任研究員は、「例えば、運送業は『男性』などといった思い込みは依然としてある。性別や年齢まで条件に加えることで、採用の可能性を狭めてしまう」と話した。

リクルートの藤井薫・HR統括編集長は同分析で、「人材獲得ができている企業は、採用対象を業界・職種未経験者、ミドル・シニア層にも広げている傾向がみられる」とした。

二つ目の思い込みは、「待っていれば応募が来る」と考えることだ。売り手市場が続く昨今、企業は採用サイトを充実させ、労働市場への訴求力を高めている。そうした努力をせずに漫然と待っていては、加熱する採用競争で立ち遅れてしまう。

三つ目は、これまでも現場が何とかしてきたから、今後も何とかしてくれるだろうと考えることだ。慢性的な人手不足が続くにもかかわらず、経営トップが採用に後ろ向きな姿勢を見せれば、現場の理解を得られず離職にもつながりかねない。

孫・主任研究員は、「思い込みに自分で気付くことは難しい。第3者に相談するのも手だ」と結論付けた。

matsuda daisuke

松田 大輔

中央大学総合政策学部卒業。2021年から米国サンフランシスコで研究資料の営業マネジャーとして勤務。2024年に株式会社オルタナ入社。

執筆記事一覧
キーワード: #ESG

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..