記事のポイント
- SBTiが金融機関向けの「ネットゼロ新基準(FINZ)」を公表した
- 注目すべきは投融資方針として「化石燃料からの移行」を掲げた点だ
- 30年までに石油・ガス会社に対する融資や保険の取り扱い停止を求めた
科学的根拠に基づき企業の削減目標を評価する国際イニシアティブ「SBTi」はこのほど、「金融機関ネットゼロ基準(FINZ)」を発表した。投融資方針として「化石燃料からの移行」を掲げた。化石燃料の開発に関わる企業に対する投融資が限定され、再エネなどCO2排出ゼロのエネルギー事業にとっては強い追い風となる。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)
SBTiは、科学的根拠に基づき企業の削減目標を評価する国際イニシアティブだ。企業が掲げた削減目標が、パリ協定で定めた「1.5℃目標」に整合する科学的見地から評価する。そのSBTiが2025年7月22日、「金融機関ネットゼロ基準(FINZ)」を発表した。
FINZは、銀行や年金基金などのアセットオーナー、資産運用会社、保険会社などの金融機関が2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を達成するためのガイダンスだ。
■森林保護方針の策定も求める
FINZを基準に脱炭素化を目指す金融機関は、自社の温室効果ガス排出量を2050年までにネットゼロにする公約に加えて、金融事業を通じてネットゼロを実現するための方針を公表する必要がある。
注目すべきは、投融資方針として「化石燃料からの移行」を掲げることを金融機関に求めた点だ。
具体的には、石炭関連事業に対する新規の融資や保険を提供しないことや、2030年までに石油・ガス会社に対する融資や保険の取り扱いを停止することを方針に掲げなければならない。
森林破壊に対処する方針を策定することも必要になる。2030年までに投融資先による森林破壊のリスクを把握して公表するか、リスクが重大と予測した場合は投融資先とのエンゲージメント(対話)をどう進めていくのか、計画を公表する必要がある。
FINZでは、化石燃料に関わる投融資先を最優先の評価対象とし、次に輸送や製造、エネルギー、不動産、森林・土地・農業(FLAG)分野を評価対象とした。
金融機関によるFINZの採用が本格化していけば、化石燃料の開発に関わる企業に対する投融資が限定される。その一方、再エネなどCO2排出ゼロのエネルギー事業にとっては強い追い風となる。