COP28直前、気候変動の現在地:排出量・気温・化石燃料

記事のポイント


  1. GHG排出量は間もなくピークに達するが、世界の気温は上昇し続ける
  2. 気候変動で飢餓や感染症などの健康被害の拡大が懸念される
  3. 化石燃料も間もなく需要のピークを迎える

11月30日から12月12日にかけて、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、COP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)が開催される。COP28を前に、国連やシンクタンク、各種団体などから公表されたさまざまな報告書をもとに、排出量、世界の気温予測、化石燃料需要など、気候変動に関連した現在のさまざまな数値データをまとめた。(オルタナ編集部=北村 佳代子)

■世界の気温は2100年に2.5~2.9度上昇のペース

国連環境計画(UNEP)は11月20日、「排出ギャップ報告書2023」を公表した。その見出しは「破られた記録」だ。副題には「気温は過去最高を更新し、世界は排出量削減に失敗した(再び)」とある。

その報告書によると、世界は現在、19世紀後半よりも平均気温が1.25度上昇した。現状の政府のコミットメントレベルが守られても、2100年頃には、世界の気温は産業革命前から比べて2.5~2.9度上昇するという。

パリ協定で掲げる「1.5度目標」からは大きく乖離した数値だ。しかもこの数値は、各国政府の計画が完全に遂行された場合の話だ。

報告書は、ほとんどの国が約束を果たすために十分なことをしていないと警鐘を鳴らす。日本政府の政策に関しても、「二酸化炭素の除去についての透明性が低い」と指摘した。

「1.5度」目標達成への努力は、2030年までの行動にかかっている。世界の気温上昇を1.5度から2度の間に抑えるためには、2030年の排出量を28%~42%削減する必要がある。

■排出量は早くて2023年にピークを迎える

気候変動科学・政策を専門とするドイツの独立非営利シンクタンクのクライメイト・アナリティクスは11月22日、排出量は2023年にピークに達し、2024年には減少に転じる可能性が70%あるとのレポートを出した。

もし、排出量のピークが2023年となった場合、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示す期限に間に合うことになるという。その立役者は、太陽光・風力発電の爆発的な成長だという。

これにより電力部門での化石燃料の割合が削減され、2023年には石炭が、2024年にはガスがピークに達すると見込む。また電気自動車(EV)の伸長によって、2025年には石油のピークをもたらす可能性があるという。

国際エネルギー機関(IEA)も同様の見解だ。10月24日に公表した「世界エネルギー見通し2023」では、CO2排出量は2025年よりも前、早ければ2023年にもピークに達すると予測する。

■大気中のCO2濃度は産業革命前の「1.5倍」に
■飢餓に苦しむ人は、80-90年代から1億2700万人増加
■保険損害額は長期的に5~7%増加
■途上国が得た気候変動適応資金は210億ドル
■計画中の化石燃料投資の実行で、「1.5度」適合水準の2倍の量に
■再エネ発電容量は2030年までに約3倍に
■世界のEV率は、新車の10%に急伸

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #脱炭素

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