「フードアルチザン活動」で広がる伝統食材の可能性――久慈地域と山ぶどうをめぐる動き[荻布 裕子]

■山ぶどうチューハイの全国販売が生産者の意欲向上に

久慈地方では古くから山ぶどうが多く自生し、伝統的に山ぶどう液を愛飲する習慣がある。1971年からは本格的な栽培が始まり、生産者たちが自生の山ぶどうを挿し木で1本1本増やしてきた。山ぶどうはとても小粒な上に種が大きく、可食部が少ないので、果汁を採るにも労力を要するが、生産者の努力により、ジュースやジャムなどの形で出荷されてきた。

久慈地方の山ぶどうがフードアルチザン活動に加わったのは、2012年11月のことだ。山ぶどうの新たな価値創造や魅力の発信、地域産業の活性化の推進などを目的に、生産・加工関係者や4つの市町村(久慈市、洋野町、普代村、野田村)、岩手県との連携により、「久慈地方連邦『太陽の山ぶどう俱楽部』」が発足。以降、山ぶどうソースにいわて短角牛を合わせたビーフシチュー、ワイン、パンなどを協働で開発してきた。また、これらの加工品を県内外のグループ店舗やネットショップ等で販売し、「地産全消」に取り組んできた。

今年の初めには、久慈市産の山ぶどうを使用した山ぶどうチューハイがイオングループからプライベートブランドとして発売され、約12万本が好評のうちに完売している。

山ぶどうチューハイ。岩手県の達増拓也知事も、自身のTwitterで「スパークリングワインのような飲み心地」と紹介した
山ぶどうチューハイ。岩手県の達増拓也知事も、自身のTwitterで「スパークリングワインのような飲み心地」と紹介した

地域としても、連携を通じ、イオングループの広報力や商品開発力に期待を寄せている。県北広域振興局の農政調整課 小原貴子さんによれば、山ぶどうチューハイが全国販売されたことが山ぶどうのPR機会の1つとなり、生産者の意欲の向上にもつながっているという。「多くの方々にもっと山ぶどうのことを知っていただき、たくさん買っていただけるような形になるといい」と展望を語る。

■イオングループの役割はきっかけを作ること

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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