続く現代の奴隷労働、第4回「国連ビジネスと人権フォーラム」報告――下田屋毅の欧州CSR最前線(48)

■初の女性議長が開会の辞
第4回目である2015年の議長は、メキシコ出身の国連グローバル・コンパクトセンター・ラテンアメリカ・カリブ海地域サポートエグゼクティブ・ディレクターのダイアナ・チャベス氏がメキシコ系ラテンアメリカから、そして女性で初めて議長を務めた。

開会の辞において、ダイアナ・チャベス氏は、2015年のフォーラムのテーマである「進捗状況の検証と一貫性の確保」を紹介するとともに、「人権侵害に対処するために国家、企業がコミットメントした内容は、実際の行動に移されなければならない」と述べ、その上で、「国家行動計画の導入による政治的コミットメント、企業の人権デューディリジェンス、苦情処理メカニズムと負の影響の緩和、企業の社会的価値を強化することを目的とした予算配分と意思決定を通じた取締役会のサポート」について進めていく必要があることを強調した。

また、国連ビジネスと人権作業部会の議長であるマーガレット・ユンク博士は、「我々は法律やプロセスについて話をするためだけにここにいるのではない。究極の目的は、紙上だけではなく、会議場でだけではなく、現実に企業の人権の慣行を改善することだ」と述べ、より実効性のある議論を行うこと、そしてその後の行動を求めた。

■フォーラムで注目された議論とは
今回のフォーラムのトピックでは、「国家行動計画の導入」「条約締結による法規制化への動き」、「先住民族の人権侵害の訴え」「現代の奴隷制の排除へ向けた取り組み」、「メガ・スポーツ・イベント」などを中心に3日間で約60のセッションが開催された。

国家行動計画の導入
「国家行動計画」については、既に欧州を中心として導入されており、現段階で、国家行動計画を作成し導入している国は、英国(2013年9月)、オランダ(2013年12月)、イタリア(2014年3月)、デンマーク(2014年4月)、スペイン(2014年6月)、フィンランド(2014年10月)、リトアニア(2015年2月)、スウェーデン(2015年8月)、ノルウェー(2015年10月)で、さらに多くの国で導入に向けた取り組みが始まっていることが伝えられた。

米国やドイツでは導入に向けた取り組みをする上で、企業を含むステークホルダーとのコミュニケーション、エンゲージメントを非常に活発に行っており、作成の過程においても、人権への意識が高まる効果が出てきているという。

まだ、アジア、アフリカで行動計画を持っている国はないが、今回アジアでは、韓国が国内人権機関を中心として取り組みを始めたことを開会式のパネルディスカッションなどで披露している。

条約締結による法制化への動き

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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