記事のポイント
- 東京大学の学園祭「五月祭」に爆破予告がありすべての企画が中止になった
- 参政党の神谷宗幣代表らをゲストに招いた講演会を実施予定だった
- 100年以上の歴史を持つ五月祭とはどのようなイベントなのか
東京大学の学園祭「五月祭(ごがつさい)」に爆破予告があり、16日午後から予定していたすべての企画が中止になった。政治サークルが参政党の神谷宗幣代表らをゲストに招いた講演会を実施する予定だった。100年以上の歴史を持つ五月祭とはどのようなイベントなのか。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

東大の五月祭とは、本郷・弥生キャンパスで毎年5月に開く、学園祭だ。1923年の「大園遊会」が起源で、100年以上の歴史がある。2日間での来場者数は10万人以上に及ぶ。東大には駒場キャンパスで11月に開く「駒場祭」もある。
五月祭には約600の学生団体やサークルなどが参加し、講演会や展示、音楽イベントなどを開いた。普段の研究テーマに関連した出し物を子どもにも分かりやすく伝える企画も目立つ。
各団体が創意工夫した企画について、来場者が投票する「五月祭総選挙」も見どころの一つだ。
■歴代登壇者に志位和夫氏や麻生太郎氏ら
政治家を招いたイベントでは学生の自主規律のもと「言論の自由」を重んじてきた。五月祭を運営する常任委員会が定めた「五月祭自主規律」では、特定の政党のPRにつながる企画は禁止しているが、討論を目的に政治家を招くことは容認している。
1999年には、日本共産党の書記長だった志位和夫氏、2000年には民主党代表だった鳩山由紀夫氏、2003年には自民党の政調会長を務めていた麻生太郎氏らを招いた。
政治家だけでなく、話題の人物を呼んで注目を集めた企画もあった。1992年には駒場祭でオウム真理教教祖の麻原彰晃元死刑囚(本名・松本智津夫)の講演会も企画した。
今年は5月16〜17日に開催し、16日正午には本郷キャンパスで政治サークル「右合の衆」が参政党の神谷代表らをゲストに招いた講演会を開く予定だった。
一方、この講演会の開催に反対する学生サークルもあった。学生サークルは、神谷代表の過去の差別・デマ発言の撤回などを求める誓約書の提出を主催団体の右合の衆に求めたとされる。
16日同日には、本郷キャンパス内でこの講演会に対する抗議活動も起きた。
そのような中、五月祭常任委員会に爆破予告が届き、警察との協議の結果、安全確保が困難と判断し、16日午後からのすべての企画を中止した。17日は手荷物検査などを実施して、予定通り開催した。
■「異なる意見をぶつけあうことが大学の価値」
この一連の出来事について、東大在学中の2008年に学生団体ivote(アイボート)を立ち上げて、20年以上に渡って若者の政治参加を促してきた原田謙介氏(40)は、「爆破予告のような行為は論外」と断じた上で、「学生が政治を巡って議論し、異なる意見と向き合う機会そのものは、民主主義にとって非常に重要だ」と指摘した。
原田氏は2014年、東大在学中、五月祭で政治イベントを企画した経験を持つ。文化放送のラジオ番組と連携し、タレントの田村淳氏や東大教授らを招き、若者の政治参加をテーマにした公開収録を行った。
原田氏は、五月祭の良さを、「政治に強い関心がない人でも足を運ぶこと」とした。「硬い政治イベントでは来ない人が、政治について考えるきっかけになる」。
中止になった講演会について、「本来であれば、賛成する学生も反対する学生も登壇し、冷静に質問を投げかけ合う場になればよかった。対立する意見が同じ空間に存在することこそ、大学の価値だ」と話した。
■小中高から議論する経験を
若者の間では強い言葉を用いる政治家やポピュリズム的な主張への支持も広がる。背景には、生活や将来への危機感があると原田氏は分析した。「給料が上がらない、将来が見えないという不安の中で、『敵を倒せば社会が変わる』というシンプルで強いメッセージに惹かれやすくなる」。
ただし、「政治への関心」と「民主主義的な対話力」は別問題だと語る。「政治家も支持を集めるために強い言葉を使う傾向がある。ネットでは過激な発言ほど再生数が伸びる。だが、自分たちが正義で相手が悪だという発信ばかりになると、民主主義の議論ではなくなる」。
だからこそ必要なのが、学校教育の役割だという。小中高の段階から、異なる政党や立場の考え方に触れ、議論する経験を積むことが重要だと訴えた。
「教育現場では、ある意味で強制的に多様な価値観に触れられる。一つの考え方だけではなく、いろいろな理念や政策を知ることが、民主主義国家に必要な基盤になる」


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