なぜマーケティングに子どもへの配慮が求められるのか:子どもの権利とビジネス(7)[森本美紀]

子どもはそうした広告を好意的に捉える傾向にあり、商品に対して客観的な判断がまだ十分にできない状況にある。それが、12歳から14歳になると、広告の目的が理解できるようになるとされているが(※3)、逆にこの年齢になると、同級生や人気芸能人などの影響が強くなり、自分が何を持っているか、周りからどのように見えるかといった要素が子どもの購買意欲の判断材料の大きな要素となる場合がある。

また、あるイギリスの調査によると、12歳~15歳の70%が、インターネット検索で上位に来る検索結果が広告だと把握していないことが明らかになった(※4)。ましてや、無料ゲームアプリの中に広告が存在していると、ゲームをしながら無意識のうちに広告のイメージや情報がインプットされることになる。

1970年代後半に児童青少年の問題の社会的な活発化、そして国内の消費者団体や日本PTA全国協議会等の働きかけを受け、1982年に「児童向けコマーシャルに関する留意事項」を策定した(※5)。この留意事項は、12歳以下の児童が対象とされ、児童向け番組のコマーシャル、そして玩具、菓子類、文房具など児童が自身で買い求める傾向にある商品・サービスを対象としている。留意事項は、児童が真似をするような危険な行為、恐怖感を与えるもの、暴力的なものや、それを持たないと仲間外れになるというような表現を避けるとしている。

オンライン広告の世界では、子ども向けインターネット・ポータルサイト「Yahoo!きっず」が、運営会社のヤフー株式会社が策定する「子ども向けサービス(Yahoo!きっず)への広告掲載基準」(※6)に準ずる広告のみを掲載するとしている。このように、日本国内においては、マーケティングや広告における子どもへの配慮は、自主規制を通じ行われている。

■欧米の広告における子どもへの配慮
アメリカのベター・ビジネス・ビューローズ協議会(英語名:Council of Better Business Bureaus – CBBB)は、子ども向け広告基準「子ども向け広告のための自主規制ガイドライン」を1975年に策定し、1996年にオンライン広告に関する規定を加えた。その中には、アメリカの課題でもある子どもの肥満への懸念の影響を受け、「食事のシーンを含む広告はバランスの取れた食事の中で該当商品を明確に明示すべき」や、「スナック商品類は食事の代替品として表現されてはならない」等の子どもの健康・影響への配慮が求められる項目がある。

※3 Raising Children Network. “Advertising and Children”: http://raisingchildren.net.au/articles/advertising.html
※4 Children and Parents: Media Use and Attitude Report (2015) http://stakeholders.ofcom.org.uk/binaries/research/media-literacy/children-parents-nov-15/childrens_parents_nov2015.pdf
※5 日本民間放送連盟. 放送基準: (付)児童向けコマーシャルに関する留意事項. 昭和57年3月18日制定, 平成21年3月18日改訂
※6ヤフー株式会社. YAHOO! JAPAN 広告掲載基準. 2015年8月24日. http://i.yimg.jp/images/listing/pdfs/koukokukeisaikijyun.pdf

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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