alternative eyes: 会社は誰のものでもない

■雑誌オルタナ85号 alternative eyes(58)

オルタナ85号(2026年6月発売号)をお届けします。今号の第一特集は「アクティビストとESGと企業価値」です。この数年、アクティビスト(モノ言う株主)による株主提案が一気に増え、その存在感を増しました。これを機に、アクティビストと企業について考えてみました。

アクティビストは、かつての日本では「ハゲタカ」などと呼ばれ、企業に無理難題を突き付ける「脅威」としか見られていませんでした。その典型が、村上ファンドでした。同社は2005年、ニッポン放送の株式を大量に買い集め、同社の経営陣にプレッシャーをかけていました。

その後、ライブドア社がニッポン放送の買収(敵対的買収)に乗り出し、村上ファンドは保有していた株式を高値でライブドア側に売り抜けました。その過程でインサイダー取引があったとして、村上世彰氏はインサイダー取引の疑いで逮捕されました。ライブドアの堀江貴文社長(当時)も、それに先立ち、証券取引法違反などの疑いで逮捕されました。

まだ、多くの日本人経営者の間では、この事件の記憶が残っていて、「アクティビスト」と聞くと、どうしても胡散臭い印象をぬぐえなかったことも事実です。そのアクティビストはいま、その姿を大きく変えつつあります。

アクティビストは、株主価値の最大化と資本効率の改善を求めることで、資本主義に「規律」と「流動性」をもたらす存在になり得ます。経営陣にプレッシャーをかけて非効率な事業の改革や株主還元を迫る一方、企業価値の向上を通じて資本市場の新陳代謝を促す重要な役割を果たしています。

一方、アクティビストと企業の関係における最大の問題点は、アクティビストの要求が「短期的な利益追求」に偏りがちな点です。株価の短期的な上昇や株主還元を優先させるあまり、人材、研究開発や設備投資といった企業の「長期的な成長基盤」が犠牲になるリスクがしばしば批判されます。

もう1点、指摘しておかなければならないのは、「会社は誰のものか」という古くて新しい命題です。私たちが19年前、本誌「オルタナ」を創刊した時にもこの問いを掲げましたが、自分で会社を始めて間もなく、こんな簡単な命題はない、と分かりました。その答えは、「誰のものでもない。株主、社員ほか皆のものである。ましてや一部の株主のものではない」ということです。

アクティビストがどんなに優れた株主提案をしても、少なくとも過半の賛同を得なければ、その提案は藻屑となって消えてしまいます。今号の第一特集の通り、オアシスが花王に仕掛けた株主提案も、結局は他の株主の賛同は得られず、否決されました。

ただし、アクティビストは、時には「ガラパゴス的」とも呼ばれる、古い日本型経営にもメスを入れようとします。例えば、日本人男性しかいない取締役会。女性取締役がいたとしても、その多くはプロパー社員ではなく、社外取締役です。ジェンダーギャップ指数が世界で118位(2025年)という後進性は、一部の上場企業では健在です。

こうしたダイバーシティの欠如は、内部からの声ではなかなか直りません。大株主でも創業家でもない経営者が長年、経営トップに居座り、さらには息子に継がせたりします。こうした日本企業の悪弊には、今後もさらに切り込んで欲しいものです。

一方、アクティビストとは対極の存在として、ウォーレン・バフェット氏、さわかみ投信の澤上篤人会長(本誌連載中)、鎌倉投信の鎌田恭幸社長らが挙げられます。彼らは経営陣を信頼して長期保有する「バリュー投資家」と呼ばれます。企業経営者には、モノ言う株主も、モノ言わぬ株主にも配慮したエンゲージメントが求められる時代になりました。

森 摂(オルタナ代表取締役)

森 摂(オルタナ代表取締役)

株式会社オルタナ 代表取締役。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在も代表取締役。前オルタナ編集長(2006-2025)。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。武蔵野大学サステナビリティ研究所主任研究員。一般社団法人サステナ経営協会代表理事。日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員。公益財団法人小林製薬青い鳥財団理事

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キーワード: #オルタナ85号

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