記事のポイント
- 日本の最新(2024年度)の食品ロス推計値は461万トンと前年から3万トン減った
- SDGsの「2030年までに食品ロス50%削減」のゴールを達成した唯一の国だ
- 食品ロスによる経済損失は3.8兆円もあり、もっと減らすことができる
農林水産省と環境省は6月30日、最新の食品ロス推計値を公表した。2024年度は年間で461万トンとなり、前年度から3万トン減った。日本は、SDGsが掲げる「2030年までに食品ロス50%削減」のゴールを達成した唯一の国になった。しかし依然として、食品ロスによる経済損失は3.8兆円もあり大きい。引き続き食品ロスの削減を進めていきたい。(オルタナ客員論説委員=井出留美)
■24年度の食品ロスは引き続き削減できた
農林水産省と環境省は2026年6月30日、2024年度(令和6年度)の食品ロス量の推計値が年間461万トン(前年度比3万トン減)だったと発表した。その内訳は、事業系食品ロス量が237万トン(前年度比6万トン増)、家庭系食品ロス量が224万トン(前年度比9万トン減)だ。

SDGs12.3(12番のゴール、ターゲット3)では、どの国も2030年までに小売・消費レベルで発生する食料廃棄を2000年比で50%削減することを目標として掲げる。年間461万トンは、2000年度(推計980万トン)比で53%の削減にあたる。日本はこのSDGsのゴールを達成した、世界で唯一の国だ。2000年度の980万トンと比較しているため他国に比べたら達成しやすいとはいえ、この実績は世界に向けて発信していきたい。
一方、食品ロスによる経済損失は、前年度の4兆円から3.8兆円に減ったとはいえ、大きい。食品ロスは経済損失かつ環境負荷の要因であり、教育、医療、雇用、福祉など、社会の様々な機会損失となり得る。 また、日本では食品ロスの多くを資源として有効活用できておらず、多くを焼却処分している。一般廃棄物処理費に費やす税金は2兆4489億円にも上り、これも看過できない。
■事業系の食品ロスはなぜ増えたのか
事業系食品ロスは、237万トンとなり、前年から6万トン増えた。
その内訳は食品製造業が110万トン、食品小売業が48万トン、外食産業が70万トン、食品卸売業が9万トンだ。
事業系食品ロスは、2022年度時点で50%削減を達成したため、現在は2000年度比で60%の削減を目標に取り組みを続けている。2024年度の事業系食品ロスは、2000年度比で57%減となり、2030年度までに60%削減という目標まであと一歩だ。
政府は、事業系食品ロスが増えた理由として「外食産業で客足が伸びたことが影響している」としている。農林水産大臣は、2026年6月30日の記者会見で、「食品関連事業者の分が増加した要因につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大で大きく減少した外食需要が回復傾向にあったことなどが挙げられると考えております」と述べた。
実際、外食産業の市場規模は回復基調にある。業界団体は2024年度の国内外食市場規模を前年度比2.9%増と推計していた。来店客数の増加や価格改定による客単価上昇が背景にあるとされる。
■外食での食べ残しは持ち帰ろう
外食での提供量が増えれば、食べ残しも増える。環境省と農林水産省は「mottECO(モッテコ)」という愛称のドギーバッグ(持ち帰りバッグ)で食べ残しの持ち帰りを推進している。
2024年12月には消費者庁・厚生労働省が「食べ残し持ち帰りガイドライン」を公表するなど、対策を強化してきた。
しかし認知度調査では、「mottECO」という言葉とロゴの両方を知っている人は1割に満たないという結果も出ている。外食需要が回復する一方、持ち帰り習慣の定着が追いつかなければ、食べ残しの量は増えざるを得ない。
■家庭での食品ロスはなぜ減ったのか
一方の家庭系食品ロスは224万トンと、前年度から9万トン減少した。家庭系は事業系と異なり、50%削減目標(2000年度比)の達成が遅れていた分野だ。今回も50%削減は達成できなかったものの、ここにきて着実に縮小している。
家庭系食品ロスが減った背景の一つが、食料品価格の高騰による買い控え行動の可能性だ。
日本政策金融公庫が2024年7月に全国の消費者2,000人を対象に実施した調査では、96.9%が食料品の「値上げを実感している」と回答し、そのうち65.9%が「消費行動は変化した」と答えた。
消費行動の変化として最も多かったのは「安い価格帯の商品に変えたものがある」(64.9%)、次いで「購入量を減らしたものがある」(56.3%)だった。購入量を減らした品目については「牛肉」(53.3%)がすべての年代で最も高かったが、「果物」(43.5%)や「総菜」(34.1%)も購入を減らしていた。
食への志向においても、「経済性志向」(できるだけ安い食品を買いたい)が44.2%と、2008年の調査開始以来の最高値を記録した。理由として「物価が上昇しているためお金をかけられないから」を挙げた人が全年代で最も多かった。
「簡便化志向」の行動で挙げられているのが「冷凍食品の活用」(43.9%)で、すべての年代で最も高かった。冷凍食品は日持ちが長く、食品ロスが出にくい。
また、内閣府の調査でも、2024年度は米が前年度比約5割増、生鮮野菜が同16%増と幅広い食料品が値上がりし、消費者は同じ品目の中でも安い商品や安い店舗での購入にシフトしていた実態が確認されている。
牛肉や豚肉の購入数量は減少した一方、割安な鶏肉は増加した。生鮮野菜と生鮮果物は全体的に減少した。物価が大幅に上昇したキャベツやはくさいは数量が大きく減少した一方、かぼちゃやもやしは増加するなど、買い方を変えた消費者の行動が数字に表れている。
「購入量を減らす」「必要な分だけ買う」という節約行動は、食べ切れずに捨てる食品を減らすことに直結する。
これは2024年度ではなく、2025年度の調査だが、スーパーの店頭調査で「消費できる自信のあるものを買う」といった意識変化が報告されており、生活防衛としての節約行動が食品ロス削減と重なった側面は大きいのではないだろうか。ただし、これは政府の公式発表では述べられておらず、筆者の推察に過ぎない。物価高と食品ロス削減の因果関係を直接検証した公的統計がないため、さらに詳細な調査が必要だろう。
■食品ロス削減施策は成果を出している
食料価格高騰要因のほか、政府・自治体・企業・NPO・アカデミアがそれぞれの立場で取り組んできた食品ロス削減施策の積み重ねは見逃せない。
賞味期限表示の正しい理解を促す啓発、フードバンクへの食品寄附の仕組み整備、自治体によるフードドライブの実施、家庭での食材使い切りレシピの普及など、地道な取り組みが少しずつ数字に表れ始めているのではないだろうか。
家庭での食品ロス削減は、一人ひとりの行動変容に依存する分、即効性は低いが、定着すれば持続しやすい。
事業系が需要変動の影響を受けやすい構造であるのに対し、家庭系は啓発と習慣化によって、少しずつでも着実に下げられる。
■食品ロスは国民1人当たり3万円以上の損失に
食品ロスは単なる「もったいない」では済まされない。
消費者庁の推計によれば、2024年度の食品ロスによる経済損失は3.8兆円、国民一人当たり年間3万1097円に上る。前年度の4兆円からは縮小したものの、依然として巨額である。
食品ロスによる温室効果ガス排出量も978万トンCO₂に達し、国民一人当たり年間79kgに相当する。
■生ごみの焼却に投じる税金は年間2.4兆円
食品ロスの多くは「廃棄物」とみなされ、多くは税金によって焼却されている。日本の一般廃棄物処理に投じられる税金は年間2兆4,489億円だ。この金額には焼却炉の建設・更新費用や運転コストも含まれるが、厨芥(ちゅうかい)類と呼ばれる生ごみも多くを占めている。なぜなら重さの80%以上が水分だからだ。
本来、じゅうぶんに食べられるはずの食品が、税金で焼却される。食品を作るまでに投じられた労働力や人件費、製造・加工コストや配送費、水資源やエネルギーなどがすべて無駄になるばかりか、焼却でも税金が使われ、環境に負担をかけ、二重・三重以上の無駄である。
食品ロスを資源とみなし、まずは必要な人に食べていただく。次いで飼料化、堆肥化、バイオ燃料化などにリサイクルする。
■個人と企業にできる食品ロス削減の取り組みは
読者一人ひとりが今日からできることはどのようなことだろうか。
外食の場では食べきれる量を注文する。どうしても食べ切れない場合は「mottECO」を店舗に申し出て持ち帰ること。生ものなど対象外の品目もあるため、店舗側の案内に従う必要があるが、持ち帰りが消費者の自己責任で広く認められるようになれば、外食産業の食品ロスは確実に減らすことができる。
家庭でできることは、買いすぎないこと。買う前に、家の在庫をチェックすること。空腹時に買い物に行かないこと。賞味期限と消費期限を正しく区別すること。冷蔵庫の中身を「見える化」すること。食材を使い切るレシピを活用する。冷凍食品を上手に活用する。食品を長期保存するときにはローリングストック法で保存すること。

(撮影)井出留美
SDGsで掲げた「2030年度までに50%削減」を達成した唯一の国が日本だ。日本の食文化とともに、「もったいない」削減を実践する国として、その良さを世界に広めたい。
※この記事は、執筆者が「Yahoo!ニュースエキスパート」に掲載した記事(2026年6月30日、2026年7月2日)をオルタナ編集部にて一部編集したものです。執筆者による過去の「Yahoo!ニュースエキスパート」記事はこちらから、執筆者のニュースレター「パル通信」はこちらからメールアドレスをご登録いただくことで無料でお読みいただけます。



