記事のポイント
- ブラジルのフードテックは、廃棄されるコーヒー豆の殻を代替チョコに変える
- 食品廃棄物を削減しながら、環境負荷を低減したカカオ原料の安定供給を実現
- 廃棄されるコーヒー豆の殻を買い取ることで、コーヒー農家の新たな収入源に
世界最大のコーヒー生産国・ブラジルのフードテック・セルヴァ社は、コーヒー精製時に大量廃棄されるコーヒー豆の殻をアップサイクルして、代替チョコを生み出した。食品廃棄物の削減と、カカオ供給網のサステナビリティという2つの社会課題に挑むビジネスとして、注目を浴びている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(写真提供)Cellva 社
私たちが良く目にするコーヒー豆は、アラビカ種のコーヒー豆のほんの一部でしかない。
コーヒー豆を精製するプロセスでは、殻・外皮や果肉などのコーヒーハスクと呼ばれる大量の副産物が発生する。コーヒーハスクの重量は、収穫したコーヒー豆の1〜1.5倍にあたるが、コーヒー産業ではこれまで、これらコーヒーハスクを未利用のまま廃棄するのが通例だった。
一方、チョコレート産業では、気候変動によってカカオの主要産地である西アフリカで異常気象の発生や病害虫の流行によってカカオ豆の供給不足に直面している。その影響は、世界的なチョコレート価格の高騰にもつながっている。
この2つの社会課題の解決に挑んでいるのが、バイオテクノロジーと食品工学を融合させるブラジルのフードテック企業・セルヴァだ。
コーヒー豆とカカオ豆は、植物としてもともと風味の成分や香気の特性で共通点が多い。セルヴァはこの点に着目し、廃棄されていたコーヒーハスクから特定の風味化合物を抽出し、カカオの特性を再現する技術を確立した。
こうして本来のカカオ豆が持つ濃厚で甘くキャラメルのような芳醇な風味をしっかりと持った代替カカオ原料「コーヒーコア」が誕生した。「コーヒーコア」は、チョコレート製品をはじめ、洋菓子、飲料、機能性食品など、幅広い食品分野で直接利用できる汎用性の高さも特長の一つだ。
■環境・栄養・農家にもメリットが
オルタナの取材に対し、セルヴァのセルジオ・ピントCEOは、「コーヒーコア」の強みは、環境負荷の低減だけではないとコメントした。従来のチョコレート原材料と比較して、栄養面・健康面にも優れた機能性を備えているという。
アラビカ種のコーヒー果実の果肉から作られた「コーヒーコア」は、従来のカカオより脂質が抑えられている一方で、腸内環境を整える豊富な水溶性・不溶性食物繊維を含んでいる。
また、コーヒーハスクには、強力な抗酸化・抗炎症化作用を持つクロロゲン酸やフェノール化合物などの整理活性物質を豊富に含むことが科学文献で認められているという。
セルヴァはまた、これまで捨てられていたコーヒーハスクを原料として仕入れることで、コーヒー農家に対して追加収入の道を切り開いた。また、食品メーカーに対しては、環境負荷を低減した「代替カカオ原料」の安定供給を実現している。
セルヴァは現在、「コーヒーコア」のB2B展開も進める。すでにオーストラリアに向けては、流通パートナーを通じて製菓ラインへの採用が進むなど、グローバル市場での実用化が始まっている。




