記事のポイント
- ソニーグループなど統合報告書を廃止する企業が増えてきた
- 各社は義務化適用が進む「SSBJ基準」に合わせて、開示戦略を見直した
- だが、統合報告書は止めても「統合思考」を捨ててはいけない
ソニーグループと三菱ケミカルグループは統合報告書の発行を取り止め、自社のウェブサイトでの情報発信を強化していくことを打ち出した。キリンホールディングスも統合報告書の廃止を検討しており、有価証券報告書に一本化する意向だ。SSBJ基準に合わせて、開示戦略を見直した一環だが、重要なことは統合報告書という体裁は取っていなくても「統合思考」は捨てていないことだ。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)
■統合報告書の廃止は開示戦略の転換か
統合報告書は、企業の財務情報と非財務情報の統合をまとめた媒体だ。発行は義務ではないが発行する企業数は、増加の一途をたどってきた。宝印刷D&IR研究所の調査によると、2025年に統合報告書を発行した企業は1214社で、前年から64社増えた。
しかし、サステナビリティ情報開示を巡る環境は大きく変わった。日本ではサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定した基準への義務化対応が進み、企業には財務情報とサステナビリティ情報を関連付けた、比較可能性や信頼性の高い開示が求められるようになった。有価証券報告書での開示が充実すれば、統合報告書との情報の重複も課題になる。
ソニーグループは2026年から統合報告書の発行を取り取り止めると発表した。今後は自社ウェブサイト上の各ページで財務・非財務情報を随時更新する方針だ。
三菱ケミカルグループも統合報告書の発行を止め、ウェブサイトを中心とした情報発信を重視する方針を示した。経営陣のメッセージや各種開示資料などを都度更新していく。
キリンホールディングスも廃止を検討している。同社は2025年度に、3年前倒しでSSBJ基準を早期適用し、有価証券報告書でサステナビリティ関連財務情報を開示した。第三者保証も取得し、日英同時開示を実現している。
同社の山﨑大護・財務戦略部開示統括室長は、海外ではサステナビリティを含む非財務情報と財務情報を同じタイミングで開示する企業が多いと説明する。「世界のCSV先進企業」にふさわしいグローバルスタンダードに沿った開示を目指し、重要な情報を有価証券報告書に移管・集約する考えだ。
こうした動きの背景には、開示媒体の重複を解消し、投資家が必要な情報にアクセスしやすくする狙いがある。一方、開示にかかる業務負担やコストへの問題意識もある。
ある大手企業の元環境担当役員は、「皆さん、開示対応疲れでしょうね。やることが多いのに、それほど成果は得られません」と指摘した。
かつて自身が在籍した企業でも、統合報告書など開示対応を巡って、「それで株価は上がったのか。上がっていないだろう」と言われることがあったという。
開示にかかる負担が増える一方、その効果を株価などで測りにくいという現場の実感がうかがえる。ただし、開示の成果は短期的な株価の変動だけで測れるものではない。
■統合報告の本質は「統合思考」にある
■「大手が止めたから」で廃止してはいけない
■統合思考が資本主義を持続可能に変える

