実は、米国の中間層にとっても1950-60年代の方が幸せだったようです。多くの工場は米国の中にあり、たくさんの雇用が生み出されていました。米国から多くの工場が海外移転すると、雇用の主体は第2次産業から第3次産業に変わりました。金融で稼げるような人はわずかで、多くは賃金が安いサービス業に移りました。
トマ・ピケティがつくった「米国の上位1%富裕層の所得が全体に占める割合(1913-2013)」を見ると、その推移は顕著です。米国で上位1%富裕層の所得シェアは、世界恐慌までは20%以上でしたが、その後、徐々に低下し、1950-80年は10%前後にまで下がったのです。これは所得の分配がうまく進んだことを意味します。
ところが、1985年ごろを境にこの数字が急上昇し、この数年は20%以上に再び増えてしまったのです。そのきっかけはレーガン大統領による「レーガノミックス」でした。
レーガン大統領は、英国のサッチャー首相と同様、規制緩和や国営企業の民営化を提唱した「新自由主義」の実践者でした。この考えは当時の中曽根政権(国鉄民営化など)、小泉政権(郵政民営化)や現在の安倍首相にも色濃く反映しています。